「23 SKIDOO」(VIRGIN RECORDS CDV2912)
23 SKIDOO
まったくよく知らないジャンルの音楽なのだが、レビューを避けて通るわけにはいかいない。なぜかというと、ファラオ・サンダースが2曲だけ入ってるからなのだ。で、えーと……これはヒップホップなのか? ラップの曲が何曲かあるけど、延々繰り返されるリフはニューウェイヴっぽいけど手作り感があるし、パーカッションが効いてて全体にラテンな跳ねる感じもあるけど、とにかくかっこいいよなあ。この「鬼面ひとを驚かす」感じというか、ハッタリというか大げさというか……そういう感じは私の好みだし、このバンドがファラオをゲストに呼んだのは、きっと同じ匂いを嗅いだからにちがいない……などというジャンルの話はどうでもいい! 私の目当ては2曲でフィーチュアされるファラオ・サンダースなのだ。ファラオの参加曲は4曲目と9曲目なのだが、そこに至るまでに聴く、ほかの曲もおもろいです。で、その4曲目だが、やけにアフリカっぽい、というか、疑似アフリカ的な曲で、ファラオがひたすらあの調子でテナーを吹く。ときどきフリークトーンなども使うが、基本的には悠揚迫らぬ感じでのブロウである。銅鑼がドワーンと鳴ったり、アフリカなのか中国なのかどっちや! と言いたくなるが、ファラオに関しては文句ありません。途中で曲調が変わり、ややアップテンポになってからのファラオはかっこいいのひとこと。録音データを見るとどうやらファラオは別日の録音らしいが、まるでそういう雰囲気はなく、普通に聴けます。だいたいはインストバンドなのかなあ。やたら大げさな5曲目は超うまいトロンボーンがフィーチュアされるし、チープなファンクというかジャズロックというか……な6曲目はフルートソロとトロンボーンソロがあって、このあたりはもうほぼジャズといっていい。しかもめっちゃ古いやつ。とか言ってるうちに9曲目になり、いきなりファラオのテナーが登場する。ビル・ラズウェルとのプロジェクトを連想させるようなゆったりとしたグルーヴの曲で、ファラオは普通の音でずるずるずるーっと吹く。そのうちにたまらなくなって咆哮しはじめるだろうと思っていると、これがちらっとそういう気配をみせただけで終わる。うーん、「ラヴ・ウィル・ファインド・アウェイ」とかのパターンかい! これはこれで好きですが。というわけで楽しく全曲聞いたぞ。