the aces

「CHICAGO BEAT」(BLACK & BLUE/ULTRA−VYBE CDSOL−46161)
THE ACES

 シカゴズルーズ黄金期を支えたエイシズのアルバムで、これがたやすく入手できるようになったことはとても喜ばしい。聴いてみるとあまりにストレートなシカゴブルーズヒットメドレーであり、シカゴブルーズ賛歌であることに若干とまどいつつも、いやいや、これはすごいわ、と素直に思った。なんというか、チェスの名盤とかにある「ひっかかる感じ」がまるでなく、そのエッセンスだけを抽出して、全力でぶつけている感じ。この演奏に「上手さしかなくて味わいがない」と思うひともいるかもしれないが、いやいやそんなことはない。上手さもあるけど、これぞシカゴブルーズの魅力であると思う。というか、「典型的」すぎてそういう意見が出てくるのだろう。フレッド・ビロウのシャッフルの躍動感ある叩き方も録音の良さもあってその魅力はばっちり伝わる。インストの「エイシズ・シャッフル」もいいが、4曲目の「フォール・ロット・オブ・ラヴィン」とか「ガット・マイ・モージョ・ワーキン」(もとのレコードでは「モージョ・ハンド」となってたやつ)とかひたすらかっこいい。さすがに「シカゴ」というくくりで取り上げられたとおぼしき「ルート66」はどうかと思うが、とにかくきらきら輝くような演奏が目白押しである。しかも、ラストの「ストップ、ストップ、ストップ」という曲はカントリー・アンド・ウエスタンやヒルビリー的なノリの曲である。幅広い音楽性といっていいのでは。私のとぼしい知識だと、エイシズはグループとしての大ヒットを持っていないので、こうしてエイシズの名でアルバムが録音されたというのはなかなかすごいことなのかもなあ、と思う。いろいろ言われているが私はブラック・アンド・ブルーはすばらしい仕事をしたと思う。もし、このフランスのレーベルがなかったら、この時期のブラックミュージックのすばらしさの一部は後世に伝えられることなく消滅したのだ。エイシズというのは、言うなればスライ・アンド・ロビーみたいなもんかな、と思っていたが、これを聴くかぎりでは全然ちがっていて、いわゆる「ハウスバンド」みたいな感じなのだろうか。ルイス・マイヤーズのボーカルもアクの強さはないし、個性的でもないかもしれないが、このすばらしい音楽に溶け込んで十分魅力的である。この柔軟で、ムチのようにしなやかなシャッフルビートの至芸のうえに、けっこう硬いというかカクカクしたノリのメロディ+リズムが乗ることによってシカゴブルーズが成立しているのか、と妄想のようなことを思ったりして。いやー、これはすばらしいですね。傑作。