idris ackamoor

「SHAMAN!」(K7 MUSIC STRUT RECORDS STRUT214CD)
IDRIS ACKAMOOR AND THE PYRAMIDS

 これはまたなんと言っていいのか……タワレコでかなりエグいジャケットのイラストにひかれて手に取ってみたら、めちゃくちゃ煽るようなポップが立っていて、そのなかにスピリチュアルジャズとかフリージャズ的なサックス……みたいな文言があったので考えに考えて購入(試聴はできなかった)したのだが、聴いてみて思わず笑ってしまった。なんというかものすごくほほえましいのである。全編フィーチュアされるボーカルというかコーラスの内容はともかく、その歌もフルートやサックスのソロもこういうと申し訳ないがヘタウマで、ひたむきな感じである。繰り返されるリフやコーラスなどによる全体のサウンド作りはそのうさん臭さも含めて、70年代のファラオやサン・ラの演奏を連想させるが、70年代から続いているグループらしくて(一度解散して再結成?)、なるほどと思った。私はこういうやつはまるで知識がないのだが、「アフロ・コズミック・スピリチュアル・ジャズ・バンド」だそうで、やっぱりサン・ラをどうしても連想してしまう。個人的にはテナーサックスのひと(リーダーで、リードボーカルでもある)がもうちょっとがんばってくれればなあ、とは思う。シャバカとかにも通じる演奏だと思うが、テナーにもっと強烈な個性があれば受け取り方も違うだろう。比較してはよくないと思うが、正直、ファラオ・サンダースからフリークトーンを抜き取ったような演奏だ。でも、私はそのフリークトーンの部分が好きなんだからしゃあないなあ。しかし、サックスとかに「ソロイスト」的なものを求めるのはジャズファン的なかたよった欲求かもしれないですね。ピラミッドというグループ名からの連想かもしれないが、フェラ・クティのことを思ったりもした(同じくボーカリストでテナー奏者でもある)。とにかく冒頭部から徹底的にスピリチュアルジャズの王道的な要素をこれでもかと盛り込んだコテコテの音作りで、こういうのが好きなひとにはめちゃくちゃウケるんじゃないでしょうか。しかも、現代の目から70年代を回顧したようなものではなく、当時からずっと続けている、ある意味本物だし。しかし、そういう音楽がある程度好きな私でも、このコテコテさはちょっとトゥーマッチである。それはたぶん、てらいがない、このあまりにストレートアヘッドな傾倒ぶりがしんどいということと、私にとってスピリチュアルジャズはあくまで、ファラオ・サンダースのようなノイズ系サックスがためてためて爆発するための土台作りのためにあり、それ自体をさほど好きではないからだと思われる。だいたいなんやねん、スピリチュアルジャズって……と文句のひとつも言いそうになる。偽物っぽいエキゾチックなテーマ、延々と繰り返されるモーダルな曲調、ベースのオスティナート的なライン、ポエムの朗読、ボーカル、コーラス、フォーキーさ、ポリリズミックなパーカッション軍……などなどそういった音楽を構成するすべてがここにある。ただひとつ、フリーキーなテナーサックスだけがないのだ(ちょこっとあっても風味付け程度です。もっと腰を据えてブロウしてほしい)。そして、私が求めるものはただひとつ、それなのだった。ああ……ここで、テナーがぎゃおおおおおっ……といってくれたらなあ、と思う自分はおかしいのか。ものすごくよくできていて、聴きどころ満載の意欲作なのだが、すまん。こういう聞き方はまちがってるとは思うが……すまん。