koh-ichi akada

「即興百人組手 其ノ壱」(AKADAX 01)
赤田晃一

 岡山在住のサックス奏者赤田晃一が、百人の相手と五分ずつの即興デュオを行うという企画。現在第二集まで出ているが、完成すると七枚組になるらしい。すごいっすー。このひとは基本的に(技術的に)上手いひとなので、そういう土台のうえに即興が積み上がっている。伸びやかな音色や、コードチェンジのある曲でのバップ的な歌い方、民謡的5音階での切迫したようなフレージング、興奮でつり込まれない冷静さ、ファンキーさ、畳みかけるようなフレーズの重ね方、共演者によってスタイルを変える柔軟性など、引きだしが多いひとだ。私はすっかり気に入りました。ソプラノ、アルト、テナーを吹くが、なかでもアルトがいちばん「鳴り」の点でも自由さでも一番良かった(10曲目はヴォイスで参加)。14曲入っているなかで、とくに気に入ったのは、中谷達也、アシーフ・ツァハー、佐藤行衛、乙倉俊、田中恵一との演奏だが、ほかの曲も全部いい。同じタイプのものがひとつもないから、飽きないのだ。ときどき音のバランスが「?」と思える(サックスが小さい)曲もあったが(4曲目とか8曲目とか)、演奏の質には関係ない。第二集を買いたいのだが、見かけたことがない。困ったなあ。

「即興・百人組手 其ノ弐」(MUSIC LAB AKADAX AKADAX−02)
赤田晃一

 第一弾をかなり以前に聴いて気に入っていたのだが、第2弾が見つからず、あきらめていたのが、ひょんなことから入手でき、さっそく聞いてみた。岡山のサックス奏者赤田晃一さんが15人のミュージシャンと一対一の即興を行っている。15曲中10曲とソプラノサックスの使用頻度が高い。このひとは根本的にサックスが鳴っていて、音程もよく、どの楽器も低音から高音まで安定しているので、聞いていてものすごく気持ちがいい。しかも、変態的なオルタネイティヴ奏法の使い手でもあるので、音楽的な引き出しが多く、こうして15人の相手と相対しても個性的で飽きさせないアルバム作りが可能なのだ。だって、たとえ相手が15人いても、どれに対してもおんなじ対応しかしなかったら聞き手は飽きてしまうでしょう。1曲目(高見沢秀久と)のように、美しいメロディを美しい音色でつむぎだしたり、3曲目(温井眞理子と)のように激しい咆哮のようなノイズをぶちかましたり、8曲目(松本健一と)のように出たとこ勝負のような豪快な即興を繰り広げたり、11曲目(在ル歌舞巫と)のようにサックスを持たずボイス対ボイスで勝負したり……とバラエティ豊かな内容で、赤田氏はソロミュージシャンとしてももちろんのこと、プロデュース力もあり、また、相手から面白い部分を引き出す能力にもたけていると思う。どの演奏もいい感じだが、とくに1曲目、8曲目、9曲目(吉久昌樹と。ギター、美し過ぎる)、10曲目(吉田隆一と。サックスのまとも(?)なテクニックからヤバいテクニックまでを駆使した演奏)、12曲目(木村昌哉と。木村さんの凄さが爆発してる)、14曲目(根本景子と。シンプルで力強い表現)などはめちゃくちゃ気に入った。どの即興も、短いなかにしっかりとしたドラマがあり、たいへんクオリティの高いものばかりだった。大推薦。もちろん第3弾もありますよね。