yohzi akazawa

「非ロケット式宇宙到達その1」(MUSIQUE69 MAR−5001)
DOGON

 これは傑作だ。トランペット(とテルミン)、ギター、ドラムという編成でロック色の強いスペーシーな演奏をしており、曲はどれもバラエティに富んでいるのだが、驚愕したのはこれがすべて即興だということで(しかもライヴ)、日本のジャズはとんでもないことになってるなあ、とほとほと感心するというか感動するというか呆れるというか状態である。辰巳さんはスペース・ビーというバンドなどでもこういう演奏をしているが、そちらはベースもいるのでけっこう地に足のついたグルーヴもあるが、このバンドはとにかく浮遊感がめちゃくちゃ凄い。しかも、トランペットはエコーやループ、ハーモナイザー(知識がないので良くからんけど)その他を使っているであろうエレクトリックな過激なシャウティングとアコースティックな「金管を吹き鳴らす喜び」の両方がたっぷり味わえる。メロディックなフレーズやリズム主体のフレーズ、ジャズっぽいフレーズ、激しいトリル、ハイノート、突き刺さるようなつんざくような音とふくよかな音……など、正直言って、トランペットの魅力のすべてがここにあるではないか。エレクトリックの使い方というのは、フレーズやハーモニーやリズムやインタープレイとまったく同じで、結局は「センス」なのだと思うが、このひとのそういうセンスにはいつもながら脱帽(つまり、ここからこういう風に音を変えようとか、この一音にこういう効果を与えようといった、瞬間的な発想とその実行力)。ギターは変態かつクールだが、じつはめちゃくちゃ熱さを感じて、ほんとうにすばらしい。一発でファンになった。このグループの要、といってはおかしいが(3人とも要なので)、このギターがほかのひとになったらもうサウンドがまったく違ってしまうだろうな。これも3人ともそうなんだけど、ギターのひとの集中力が半端ないと思った。ドラムもものすごーく私の好みで、石渡さんのバンドのアルバムで聞いたことはあるけど、そのときもすげーと思ったんだよな。フリーでファンキーで大音量なのに、全体がすごく繊細に聞こえるのだ。さまざまなリズムでの反応(突然テンポが変わったりべつのリズムになったりとか)のレスポンスの速さと思い切りのよさとグルーヴ……聴いていてほれぼれする。そんな3人が、どこまでわかりあえとんねんこいつらと嫉妬しそうになるほどの緊密なインタープレイを行いつつ、スペーシーでリズミックなかっこいいサウンドを提供してくれるのだが、もう一度書くけど、これが全編即興とはなあ……。どの曲も、まるで違ったパターンなので(なにがどうなってるのかわからない曲もあるのだ。まあ、そういうのはテルミンなのかなあ……)、絶対にコンポジションがあると思ってた。ノイズな曲もあるし、メロディのある曲もあるし(とくにラストの曲ね)、フリーキーな曲もあるし、ファンキーな曲もあるし、いわゆるフリーインプロヴァイズド的な曲もあり、何遍聴いても飽きません。しかも、そういう予備知識(?)的なものがなくても、めちゃくちゃ楽しく聴けて、盛り上がることまちがいなしなのが今の音楽だなと思う。もう、大推薦します。アルバムタイトルはいかがなものかと思うが(私は好きですが)、ジャケットのドゴンもいいし、裏ジャケットの宇宙に泳ぐリュウグウノツカイもいい。こういうアルバムがナントカジャズ年間ベストにまったくだれもあげていない雑誌ってなんなの? とすら思います。だれのリーダーバンドなのかよくわからないが(たぶん対等)、一番先に名前の出ているギターの赤澤洋次の項に入れた。