sevek aldyn-ool

「KARGYRAA IN TAIGA」(EKI ATTAL RECORDS EKI−1104)
SEVEK ALDYN−OOL,OPEI ANDREY AND DOSTAI OTKUN

 なんの知識も持ち合わせていない私だが、とにかく圧倒された。巻上公一さんプロデュースのホーメイのアルバム。ホーメイにはいろいろな種類があり、これは「カルグラー」というものだそうだ。カルグラーは「地鳴りの響きのごとき低音」と書かれているとおりの凄まじいものだが、「圧倒された」と書いたけどけっしてとっつきにくいものではなく、逆にめちゃくちゃ楽しく聴ける音楽だと思う。ここでは口琴とイギルという弦楽器が伴奏しているが、シリアスでもありポップでもあり、やみつきになる。歌詞があり、それは民族的な叙事詩であったり、民謡であったりするらしい。それだからか、つねに凛としたテンションが感じられる。カルグラーといっても、つねに低音で歌うだけではなく、さまざまな展開があり(カルグラーというのは唱法のテクニックの名前のようだ)、ひたすら没入させられる。といって、いわゆる意図的なトランスミュ―ジック的なものではなく、ずっとこの地で引き継がれ、磨かれ、新しい息吹を吹き込まれてきた「民謡」なのだと思う。セヴェック・アルドゥンオールとオッペイ・アンドレイのふたりによるツインヴォーカルは最強です。この音楽について私はまったく知識がないのだが(ホーメイじゃなくてホーミーにはじめて見参したのは坂田明のモンゴルの番組。あれではじめて知った。そのころはホーミーとホーメイのちがいも知らなかった)、「標高四千メートルの銀色のタイガに誘う」とキャッチにあるが、いや、ほんと、そういう気持ちにさせられるのだ。「評価」などできないが、このCDに収められている演奏は、我々を豊かにしてくれるものであることは間違いない。最初にこういった喉歌なるものを(坂田さんの番組で。あとはサインホ(サインコ)さんかなあ……)聴いたときは、その珍しさと西洋音楽にない特殊な唱法にびっくりしたが、その後、そういう「びっくり」はなくなったが、こうしてときどきホーメイやホーミーのアルバムを買って普通に聴いている、ということはやはりこの音楽がすばらしいからだろう。しかし、巻上さんはよくこのアルバムを作ったものだと思う。音楽好きとして、感謝するしかありません。傑作。なお、先に名前の出ているアルドゥンオールの項に入れさせていただいた。