zoh amba

「O LIFE,O LIGHT VOL.1」(577 RECORDS 5900−1)
ZOH AMBA FEATURING WILLIAM PARKER AND FRACISCO MELA

 話題のゾウ・アンバ。アイラーのボックス「リベレイションズ」に錚々たるメンバー(ロリンズ、シェップ、デヴィッド・マレイ、ジョー・ロヴァーノ、ジョン・ゾーン、レジー・ワークマン、パティ・ウォーターズ、カーラ・ブレイ、ビル・ラズウェル、ジマイムズ・ブランダン・ルイス……とともにインタビューが結成されていることでもわかるが、とにかく注目されているのだ。先日、JAZZ TOKYOに掲載されたインタビューを読んでも、全貌はつかめないが、いやいやいや、正直この年齢でこの演奏なのだから(年齢のことはあんまり触れたくない。若いのにすごい、みたいな言い方も嫌だ。10歳だろうと90歳だろうと関係ない。でも……この巖のような圧倒的な存在感を聴くと、どうしても書かざるをえない)、全貌なんかつかめるはずもない。ひたすら演奏を聴くだけですよ。この先、どのような変化が起こっていくかわからないが、それがもう楽しみでしかない。いや、もう、いろいろ教えられたというか……いや、これってジジイの感想でしかないのか。私としては、フリーミュージック(ととりあえずざっくり言っておく)においてテナーをチョイスして、こういう表現を「してくれている!」ということに感謝である(3曲目ではフルートも吹く。民族楽器のような吹き方。このフルートのある意味稚拙な演奏にアート・アンサンブル・オブ・シカゴ的な魅力を感じるのです。ほんまにすばらしいと思う)。こういう音楽において、サックスをゴリゴリ、ガリガリ、バリバリ、ギョエーッと吹くひとは今でもたくさんシーンに登場しているが、そういう表現のなかにスピリチュアルなものを感じさせるまでに至るひとは多くはない。ゾウ・アンバは数少ない、そういう表現ができるミュージシャンだと思う(ジャンル(?)としての「スピリチュアルジャズ」ということではないです。透明感、というのかなあ……)。そして、ウィリアム・パーカー! すばらしいベースプレイで完璧にこの音楽に寄与している。ドラムのフランシスコ・メラも同様である(すごいメンバーだ、とみんな思ってるのではないでしょうか)。このかなり「ごつい」感じのトリオ表現に至った経緯などは興味深い(前述のインタビューがその手がかりになると思う)。リリカルでフリーキーで力強く伝統的でアヴァンギャルドで……しかも奇をてらったり無理をしたりしている様子がないアンバの演奏からは今後も目を離せない。アルバムタイトルもすばらしいし、収録時間もちょうどええ。傑作!

「O,SUN」(TZADIK TZ4038)
ZOH AMBA

「O LIFE,O LIGHT VOL.1」の一カ月まえ、ニューヨークに来てすぐに録音したアルバムらしい。ジャケットからなにから作り込まれた作品であり、内容も1曲目の冒頭から、あー……とため息が出るようなすばらしさ。「O LIFE,O LIGHT VOL.1」がかなりの剛腕な演奏であることに比べると、本作はもっと静謐で……そう、スピリチュアルな感じである。いや、もう圧倒的であります。1曲目は柔らかなテナーのサブトーンではじまり、強いビブラートを伴ってはいるが、清冽なロングトーンが全体にわたって続く。なんというか、こういう表現は誤解を受けそうな気もするが、聴いているとこちらの心が浄化されるような演奏だと思う。2曲目はテナーのリフだけ聴くとアイラーみたいな感じなのだが、ピアノやベースのせいで、まるで異なった印象の曲になっている。3曲目はゴリゴリの激しい演奏で、ピアノが大きくフィーチュアされる。4曲目も静謐な感じだが、静謐さのなかに熱いエネルギーを感じる点がすばらしいです。サブトーンのコントロールが絶妙。ベースソロもテナーと双子のような続き具合。正直、フリーミュージックというのか、こういう演奏の将来は明るいと思った。逸材がどんどん出てくる。心強い。5曲目はプロデューサーでもあるジョン・ゾーンが参加して、激熱の演奏。こういうアコースティックな伝統的な「フリージャズ」としては、今聴ける最上のレベルのものだろう。いやー、胸が熱くなります。かっこよすぎる! はまりすぎている、という感想もあるかもしれないが、「いいもの」は時代を超えて「いい」のであります。最後のピアノの「ぐわああん」もいいっすね。6曲目はシリアスなベースソロではじまる。シリアスといっても変に重いわけではなく、なんつーか、よだれが垂れるような、かっこよくて、いい感じの演奏なのだ。そこにピアノとドラムが加わってのフリーな即興になるが、テナーも微細な音で参加している。浮遊感があるなかで集中力も保っており、すごいとしかいいようがない。7曲目はピアノとテナーのデュオによる演奏。どんどん過激になっていくが、その凛とした空気感はずっと持続される。こういったパワーミュージック的な側面もあるアコースティックなフリーミュージックに、新しい息吹が吹き込まれている感じがめちゃくちゃある作品。あー、楽しい。傑作! 内ジャケットにはメンバー全員がマスクをしている写真が掲載されていて、なかなかつらいものがある。ジャケットの樹の写真はゾウ・アンバの手になるものだそうで、これもすばらしいです。