andmo'

「UNIDENTFIED MYSTIC AETHER」(TALKING INKO 001)
ANDMO’

 テルミンデュオのアンドモによるアルバム。クールななかにも熱気と緊張が伝わってくる、熱い一枚。1曲目はテルミン二台による短い即興で、アルバム全体のイントロダクション的な感じ。2曲目はザクザクいうギターとベースに乗って、テルミンがマカロニウエスタン的なテーマを奏でるが、それが一転してモンゴルの大平原になるかっこよさ。テルミンというと、私がよく見るのは、一種の肉体的パフォーマンスも含めた即興のためのツールで、ノイズ発生装置としての使い方をしているインプロヴァイザーのひとが多いのだが、アンドモはメロディをテルミンが担当することも多く、それは正しい音程を取るのがたいへんむずかしいし(耳がよくないと無理でしょう)、しかも、そのことになんの意味があるのか、ちゃんと音程が簡単に出る楽器が無数にあるのに、という意見もおそらくよくわかったうえで、彼らはテルミンでプログレをやったり、リズムを刻んだり、かなり複雑なメロディを弾いたりすることに挑戦していて、すごい。3曲目は7+6の変拍子のリフがもうほんまに死ぬほど延々と続き、それに乗ってテルミンが暴れ回る。かっこいいね。4曲目は、テルミン二台による純粋な即興で、お互いの音を聞きながらの、繊細で柔らかなノイズのからみあいが楽しめる。ラストの5曲目は7拍子のオスティナートがずっと反復され、そこにテルミンが美しいメロディをヴァイオリンのような豊潤な音色で奏でていく。ゆっくりゆっくりと、本当にちょっとずつ盛り上がっていき、最後にはとんでもないオーケストラのようになるので、そのゆっくりじっくりの美学も味わえます(アルバム中の白眉か。ああ、プログレ)。変なヴォイスも効果的だし、最後はハードロックみたいになって、またテーマのリフに戻り、構成もかっちりと終わる。最後の最後にすごい仕掛けがあるが、ネタバレになるのでそれは内緒。というわけで、思っていたよりもはるかにポップではるかにちゃんとしていて、正直、もっとめちゃくちゃなところがあってもいいのになあとさえ思ったが、テルミンだとめちゃくちゃするほうが容易く、テルミン二台でこれだけの「ちゃんとした音楽」「破綻のない演奏」をやるのは逆にものすごくむずかしいことだと思われるし、そういったテンションも伝わってきて心地よい。計算と即興がちゃんと同居しているし、大音量で聴いてほしいアルバム(とくにテルミンデュオの部分)。アンドモとは、一度対バンして、一度飛び入り的に参加させてもらったことがあるが、あのときは曲のサイズがわからず、それこそ無茶苦茶になってしまったので、機会があればちゃんと打ち合わせとか練習したうえで、吹かせてほしいと思っております。