eddie baccus

「FEEL REAL」(SMASH RECORDS PHCE−6002)
EDDIE BACCUS

 よく評論家とかが「このアルバムの価値はひとえに○○が参加したことにある」とか書いているのは腹が立つ。たとえば「ベニー・グリーンのこのアルバムの価値はひとえにソニー・クラークが参加していることにある」とかいった感じ。リーダーをちゃんと聴いたれや、と思うわけだが、このアルバムに関してはさすがに、ローランド・カーク(それも一曲だけ変名での参加)がこのアルバムの「価値」であるといわざるをえない。エディ・バッカスというこの盲目のオルガニストはこのアルバム録音時点でまだ26歳だが、星出というひとがライナーでバッカスの「類い稀なるテクニック」を称賛している。しかし、たしかにものすごいテク(指くせ?)を披露する曲もあるのだが、曲によっては、なんというかぎくしゃくしたノリで、おんなじフレーズばっかり弾いているような曲もあり(聴いていて、あ、また出た、また出た、とうんざりする)、どっちが本当のエディ・バッカスなのかよくわからない。なんというか、サックスとかだと「指が回ってない」という表現をするが、バッカスもオルガンに関して「指が回ってない」ような、フレーズを最後まで弾ききれずに次のフレーズに移ってしまう……みたいな箇所がいっぱいあって、つらい。一曲だけカークがフルートで参加しているのだが、その存在感は圧倒的で、やっぱり私もこの一曲のために買ったわけなのである。まあ、テクはないけどファンキーなフィーリングで迫る、とか、そういったひとでもないわけで、聴きどころってどこなんだろう。先述のライナーを書いたひとが、「勢いだけの、ただファンキーなプレイではなくて、──もちろんそういう存在もありだけれど──、確実に明確に、オルガン本来の「音」を出すオルガニスト。多くのオルガニストにみられるようなアーシーで、泥臭いオルガニストが好きな人にはちょっと物足りないかもしれない。優等生に映るかもしれない。ただ、覚えていてほしいのは、彼のようなスピーディーで正確無比で、エモーショナルな演奏ができるのは彼だけであり……」云々と書いているのは、いったいどこをどう聴いているのか。勢いだけの、ファンキーなプレイをするオルガニストを「だけ」とか「ただ」とかいった言葉で馬鹿にしたあげく(もちろんそういう存在もありだけれど、って、なにがもちろんじゃ)、エディ・バッカスのことを「正確無比」とかいってるが、1、2曲めを聴いてどこが正確無比なのか。そもそも「覚えていてほしいのは」て誰に向かって言うとんねん。わしはおまえの生徒か。やっぱりこのひとは、「下手」でしょう。ちがうのか?