amiri baraka(leroi jones)

「NEW MUSIC−NEW POETRY」(INDIA NAVIGATION IN−1048)
AMIRI BARAKA WITH DAVID MURRAY AND STEVE MCCALL

 めちゃめちゃ好きなアルバム。もう好きすぎて困るぐらい。ジャズと詩の朗読のコラボ的演奏でなにか一枚と言われたら、躊躇なくこのアルバムをあげる。アミリ・バラカは、あのリロイ・ジョーンズのことであり、60年代のフリージャズ勃興期に、その思想的側面をバックアップする立役者であった。その後、冷静にその時代のジャズをふりかえって観察すると、ほとばしるような熱気のなかに、いろいろな胡散臭さ、大げささ、嘘、駆け引き……などが見え隠れするが、この時期、つまり80年代になってから発表されたリロイ・ジョーンズのこのアルバムを聴くと、少なくともリロイ・ジョーンズというひとは「本物」だったのだなあと思う。リロイ・ジョーンズがひたすら詩を朗読し、そのバックをデヴィッド・マレイとスティーヴ・マッコールのふたりがつとめる、というライヴなのだが、リロイの朗読があまりにすばらしすぎて、まず驚くし、バックのふたり(とくにマレイ)が千変万化かつ的確きわまりないすばらしいバッキングをつけていて驚愕島栗で空く。しかも、めっちゃ心地よいのだ。日本でも「詩とフリージャズ」というカップリングでいろいろな試みが行われていた(行われている?)が、そういう中での最高峰といえるのではないか。マレイは単にずっとフリーで吹いているのではなく、ときに応じてさまざまなスタンダードを織りまぜながら、朗読にぴったり寄り添うような演奏で、リロイを盛り上げていく。その巧みさ、深さ、かっこよさは筆舌に尽くしがたい。もちろん英語なので、リロイがなにを言ってるのかはさっぱりわからないが、二枚にわたる詳細な歌詞カード(?)がついていて、それを見ればだいたいの意味がわかる仕組みになっている。しかし、英語がわからなくても、リロイの朗読は非常に音楽的、演劇的、即興的なので、まったく意がとれなくても問題ない。いろいろと深い問題を扱っているのだが、そういったことはまったくなかったとしても、この朗読+演奏はすばらしい。マレイってビバップも吹けるんですねえ。ちょっと感動。