「CRACKSHOT」(A PRODUCT OF HIP’S ROAD AVAN059)
JOEY BARON+BARONDOWN
これはよかったーっ! テナー、トロンボーン、ドラムという、ありそうでなかったトリオ「バロンダウン」のアルバム(ほかにも何枚かこのメンバーで出ているらしいが未聴)。コード楽器がないので、テナーが吹いているときはトロンボーンが伴奏して、トロンボーンが吹いているときはその逆……ということになるわけだが、実際にはことはそんなに単純ではない。学生時代に、いつか自分のバンドを持つことができたら、ドラムに2テナーのトリオで、フリーもスタンダードもやれるグループにしたい、と思ったことがある。このジョーイ・バロンのトリオはそのとき考えた私の理想型にかなり近い。ベースもピアノもギターもいない、管楽器と打楽器だけ、という状態でチューンをきちんとやり、しかも即興の比重が非常に高い……というバンドは、その管楽器奏者にものすごく高度な音楽性、テクニック、柔軟性……などが要求されるのはわかりきったことであるが、このトリオはまさに3人が3人ともその点はみごとに及第点であり、ソロイストとしても皆、自分の個性を完璧に出しつつ、しかもほかの二人に対してのバッキングやオブリガードなども細心の注意を払ってこなしており、一瞬たりとも気を抜くことができないバンドであるにもかかわらず、どこかリラックスした空気さえあって、聞いていて楽しい。エラリー・エスケリンは自分のバンドよりもいきいきしていて、自由にブロウしているようだし、スティーヴ・スウェルも完璧なリズムで吹きまくり、この変態バンドを支えている。ほんと、すばらしいアルバムで、すっかり気に入った。中古で買ったのだが、誰だこんないいアルバム売ったやつは。怒るでしかし。