basie all stars

「BASIE ALL STARS LIVE AT FABRIK VOL.1,HAMBURG 1981」(JAZZLINE D−77125)
BASIE ALL STARS

 これは宝物のような音源。ベイシー・オールスターズなのにベイシーは抜き……と思っていたらいきなり「え? ベイシーか?」というピアノではじまり、ベースもぶんぶんと強力なので、思わずメンバー表を見ると、ナット・ピアースとジョン・ハードなのだった。おー、これはすごい。しかもドラムはガス・ジョンソンで、81年という時期に御大をのぞくとベイシーサウンドを再現するには最高のリズムセクションであり、しかも、フロントの六人が豪華すぎる! ハリー・スイーツ・エディソン、ジョー・ニューマン、ベニー・パウエル、マーシャル・ロイヤル(!)、バディ・テイト、ビリー・ミッチェル……といずれもリーダー格の大物ばかり。1曲目はアップテンポの顔見せ(?)的ブルースで、バディ・テイト、スイーツ・エディソン、ベニー・パウエル、ビリー・ミッチェル(かなりホンクする!)、ナット・ピアースとソロがリレーされ、最高の幕開けである。6管編成であっても、きっちりビッグバンドのサウンドがするところがすばらしい。カンサスシティジャズのひとたちは大物になってもちゃんとそれぞれのソロのバックでリフを吹くからいい。全員、オールスタージャムセッションではなく、ソロ以外にアンサンブルもばりばりこなしているところが感涙。全員さまざまなロードバンドの叩き上げのタフなひとたちばかりで、この時点でスイーツ・エディソンは76歳ぐらいだが、本当に衰えが感じられない。すごい! 2曲目はベニー・パウエルをフィーチュアしたバラード。これも単なるバラードではなく、ビッグバンドのバラードになっている。ベニー・パウエルも最高! 3曲目は「シャイニー・ストッキングス」であのアレンジとはややちがうのだが、この軽さもいい。なにしろマーシャル・ロイヤルのリードが聞こえるのがうれしい。トランペット、テナー、トロンボーンとソロが続き、そのあとにマーシャル・ロイヤルがソロをするが、ベイシー在籍時にこの曲ではたぶんソロはしたことがないと思われ、そういうことも考えると楽しくなってくる。ラストはあのアレンジで、ガス・ジョンソンが見事。4曲目はバディ・テイトをフィーチュアしたバラードで、いつもながらすばらしいサブトーンのたくみな扱いなど美味しすぎてよだれが垂れる。これぞジャズテナーサックスの醍醐味。カデンツァの最後の部分をサブトーンにする技もあざとくてすごい。5曲目もバラードで、マーシャル・ロイヤルをフィーチュアした曲。この演奏が本作の白眉といってもいいかもしれない。それぐらい感動。冒頭いきなりあの美しさと力強さのかたまりのような音が心を打つ。表現力がすごすぎる。息を抜いた細い音、管体が鳴りまくっている音、透明感のある音のあと突然来るダーティーなグロウル、露骨なベンド……とくに高音部ののびやかな音のすばらしさは筆舌に尽くしがたい。どれだけ賛美しても褒め足りないぐらいの最高のパフォーマンス。6曲目はスウィーツ・エディソンをフィーチュアしたミディアムの楽しい曲。ミュートをつけて軽く、小粋にスウィングする。どんな手垢のついたフレーズもいきいきと活性化してしまうこういうひとには無条件で感心してしまう。ナット・ピアースも張り切ったソロ。スイーツのエンディングの表現力もさすがとしか言いようがない。グレイト! 終わったあと観客からすごい歓声と拍手があがる。ラストは「リトル・ポニー」で、まさに50年代のベイシービッグバンドの音が聞こえてくる。長めのピアノトリオによるイントロ(ジョン・ハードすごい!)からテーマ。バディ・テイトがエキサイティングなソロで先発。ベニー・パウエルも秘技というかネタ出しまくりのブロウ。ビリー・ミッチェルはモダンなフレーズ中心に善明のソロだが、後半はホンクもぶちかます。めちゃくちゃ上手い。最後はブレイクの嵐で、そこも見事にこなす。かっちょえーっ! 盛り上がりまくってアンコールの嵐。いきなりはじまるのはまたしても「リトル・ポニー」でソロはビリー・ミッチェル。途中から音を濁らせ、高音部でホンクしたりとなかなかいかつい演奏。最後はまたまたブレイクで聞かせてエンディング。ここまでやったら客も納得であろう。12曲入ってるように錯覚するが司会のパートを曲に勘定しているので実際は7曲である。あー、VOL.2の発売が待たれる。傑作! だれの項に入れるべきか迷ったので、「ベイシー・オール・スターズ」として項を立てておきます。