「LIVE AT THE JAZZ CORNER OF THE WORLD」(EARLY BIRD RECORDS EBCD−106)
THE MICKEY BASS NEW YORK POWERHOUSE ENSEMBLE
クレイグ・ハンディ(めちゃくちゃ好き)目当てに中古で買ったのだが、こういうアルバムを聴くたびに、なんで前の持ち主はこのアルバムを売ったのか、という疑問が浮かぶ。内容は最高なので、おもしろくないから売った、というのとはちがうと思うが、思っていたものとはちがっていた、ということだろうか。あるいはよほど金に困ったのか。でも、そういうときはしょうもない作品から売りに出すと思うが……。もしくは所持していたひとが急に亡くなったとか……(ままありうる)。スタンダードを小粋に奏でるピアノトリオ的もものの愛好者で、こういった70年代的なゴリゴリの演奏は嫌いなひとだったのか……などなどと妄想が広がる。というのも、本作は私にとってはドストライクな内容であって、アルトのアントニオ・ハートがいわゆるコルトレーン的なアルトで熱血なソロをガリガリと吹きまくると、テナーのクレイグ・ハンディも負けずにガリガリ吹きまくる。そして、ピアノがやけにすごいじゃん、と思ったらジョン・ヒックス! ドラムもいいソロをかましてくれる。ライヴの熱気がそのままパッケージングされたような熱い演奏。しかも、大味な演奏ではなく、ちゃんと繊細な気遣いも十分にある最高の内容である。リーダーはベースのミッキー・ベース(!)という人だが、キャリアもすごいし、(一見ジャムセッション風だが)アレンジもしっかりしているうえ、1曲目のコルトレーンに奉げたマイナーブルースは、ジャズメッセンジャーズをはじめいろいろなミュージシャンに取り上げられた作品らしい。2曲目のクレイグ・ハンディのソロ(とそれを盛り立てるメンバー)は最高で、感涙。高音と低音を交互に吹きまくるソロ(コルトレーンもやってたなあ)、めちゃめちゃかっこいい。3曲目の「ソウル・アイズ」もミッキー・ベースの曲ということになっていて、同名異曲かと思ったが、もちろんそんなことはありません。この曲の2管でのアレンジ(ヘッドアレンジ的な、めちゃくちゃ薄いキメだが、それがいいんです)は最高で、うっとりする。ソロももちろんいい。後半のアルトとテナーの即興デュオも楽しい。4曲目は、アルトとドラムのデュオなどもあって、ゴリゴリの展開。だが決してノリ一発の雑な演奏ではなく、ほんと、隅々まで気配りのあるすばらしい演奏だと思う。ジョン・ヒックスの壮絶なソロもすごいっす。傑作。英文ライナーのひとは、1曲目のソロオーダーをクレイグ・ハンディからアントニオ・ハートと書いてるような気がするが(私の読解力不足?)、それは間違いで、逆です。惜しむらくは、フロントの録音レベルが若干低いことで、もうちょっと高かったらなあ、とは思いますが、ライヴゆえの昂揚もあって、傑作だと思う。こういうものは売ったらあきまへんえ。