「EVOLVING SILENCE VOL.1」(EARSAY’S JAZZ ES097)
「EVOLVING SILENCE VOL.2」(EARSAY’S JAZZ ES091)
HAMID DRAKE,ALBERT BEGER,WILLIAM PARKER
第二集のほうには「ニュー・ミュージック・フロム・イスラエル」というキャッチがついているが、まさにそのとおり! ネット通販で見つけたとき、ベースとドラムがウィリアム・パーカー、ハミッド・ドレイクというので、買おうか買うまいかかなり考えたが、結局やめた。その理由は、主役が全然知らないテナーのひとだということと、第一集、第二集が同時に発売されているので、もし、しょうもなかったときの痛手が大きいということである。でも、お茶の水のユニオンに行ったときに現物を手に取り、ほかに買うものもなかったので、きよぶたで購入。さっそく聴いてみると……めちゃめちゃええやん! 傑作かも。うわー、ちょっとびっくり。このテナーのひと、音は太くたくましいが、よくある根性吹きや気合い一発大味空回り型ではなく、出すフレーズ全部、ちょっと濁った音色やいろいろなニュアンスも含め、すみずみにまで注意が行き届いていて、まさに私の好み。こんなやつおるんや! まあ、私は正直言って、テナー以外のフリージャズ奏者にはきわめて無知だが、テナーのひとのことはまずまず知っているつもりだったが……いやはやすごいぞ。後期コルトレーンを模範とした感じの、ひじょうにストレートアヘッドな吹き方で、私の好きな「古いタイプのフリージャズ」である。ごりごり吹きまくるが、音とリズムがしっかりしているのでまったく耳障りではなく、もっとやれ! と言いたくなる。もちろん共演のふたりも最高のプレイでテナーを盛り上げるが、ベースが目立ちまくる曲やドラム(とヴォイス)が目立ちまくる曲もあり、三者対等というバランスのいいアルバム。第一集も第二集も甲乙つけがたいので、テナー好きでフリー好きのあなたは思い切って両方買いましょう。ちょっとデヴィッド・ウェア的なところもあるかも。カークばりのフルートもど迫力だ。イスラエルのフリー系テナーというとすぐにアシーフ・ツァハーを思い出すが、彼よりも先輩のテナー奏者にこんなやつがいたとはなあ。第二集のほうがナンバーが若い、というのも謎。3人の連名だが、完全即興の曲以外は全部テナーのひとの作曲だし、あきらかにリーダーなのでこの項にいれた。