「THE GEORGE BENSON COOKBOOK」(COLUMBIA RECORDS CS9413)
THE GEORGE BENSON QUARTET FEATURING LONNIE SMITH,ORGAN
フィーチュアリング・ロニー・スミスとあるが、実際にはベンソン本人のギターを別とすると、おもいっきりフィーチュアされているのは、まずロニー・キューバーのバリトンである。たしかにこのアルバムでのベンソンのギタープレイはめちゃめちゃかっこいいが、それだけなら私は本作を手放していただろう。しかし、いまでも手元に置いて愛聴しているのは、まずもってこのロニー・キューバーのぶっ飛んだバップバリサクのおかげである。後年、ガッドギャングなどで有名になる彼の演奏の根本は、こういったビバップフレーズを完璧なリズムで、しかもスピード感を保ったまま、吹きまくれるところにあり、それがバリトンサックスの重量感を損なわずに吹ける、というのが、このひとの心地よいところなのである。たとえばペッパー・アダムスなんかは、バリトンの低音の特性をいかした豪快でゴリゴリしたソロをするが、キューバーはバリトンぽさをちゃんとキープしつつ、高音から低音まで均一な感じがあって、そこが良い。そして、つぎにはかなり衰えが目立つと巷間言われているが実はがんばっているベニー・グリーンのトロンボーン……これも捨てがたい(2曲だけフィーチュアされている)。例の、ワンノートソロも聴けるし、決して「衰えて」いるというところまではいってない。十分、持ち味が出てます。ジョージ・ベンソンのアルバムではこれが一番好き……というかこれしか持っていない。ブラザー・ジャック・マクダフのバンドでつちかったファンキーで深いブルースフィーリングがもっとも露骨で、かつ洗練された形で表されているアルバムだと思うのですが、どうでしょう。「オール・オブ・ミー」では、後年の「ブリージン」などを彷彿とさせる(嘘ですよ)ボーカルも聴ける。ギターにまるで興味のない私だが、ベンソンってギターうまいし、歌心あるし、すげー……とこのアルバムを聴くといつもひたすら感心してしまう。ジャズギターもええなあ、と思わせてくれる点で私にとって貴重な作品。