anders bergcrantz

「LIVE AT SWEET BASIL」(DRGON RECORDS DRCD225)
ANDERS BERGCRANTZ

 傑作。このひとはかなりのアルバムを出しているが、個人的にはこの作品がいちばん好き。なんちゅーたかて、メンバーが凄すぎる。リッチー・バイラーク、ロン・マクルーア、アダム・ナッシュバウムって、どこのクエストやねん。そして、テナーのリック・マルギーツァがちょっととんでもない、凄まじい演奏を繰り広げていて、こういうテナーが大好きなひと(つまり、私です)にはたまらん内容。もちろん、主役のアンデルス・ベルグクランツ(と読むのか。ほかにも表記があるので、よくわからんわ)もめちゃめちゃいい。ウディ・ショウとフレディ・ハバードのいいとこどりをしたような感じだが、超安定した演奏で、音色もつややかで、どんだけトランペット上手いねんという感じ。しかし、熱さも十分あるし、爽快感もあるし、そのうえウディ的な「あの感じ」を持っている。音色ではなくてサウンド的な暗さというか、設定しているコード進行の変態性とかがダークなのだ。ハバードのような華やかさもあって、言う事なし。そして、さっきも書いたがリック・マルギーツァのテナーは、本当にイマジネーションを途切れずどんどん繰り出してきて、ジョー・ヘンダーソンのようなくねくねしたフレーズを駆使しながら、完全にひとつの自分だけの世界をコントロールして作り上げており、ちょっとしたずらしとか、不安定な音使いなどがかっこよすぎて困る。フロントのふたりのバトルの場面など聴いていると、鋭く突き刺さるようで、しかも考え抜かれたトランペットと、テナーの全音域を柔らかく使いつつ、やってることは大変態なテナーのからみが、ウディ・ショウとジョー・ヘンダーソンのそれに聴こえてきたりして。リッチー・バイラークも美味しいところをさらっていく。というか、ひとりひとりが主役に等しい凄まじい演奏をするので、それを耳で追っていくだけでもう大変。しかも5人の一体感も半端ないのだ。選曲も良く、一曲目の「インヴィテイション」から、オリジナルにスタンダードを織り交ぜて、いかにもライヴっぽい。緊張感とリラックスの両方味わえる、ほんまにいいアルバム。傑作。