「CAUGHT IN THE ACT!」(NOT FAT RECORDS NFR06−22)
GONZ
「猫ジャケット」のジャズレコードの一枚として名高い(嘘)。このGONZというのはジェリー・バーゴンジのリーダーバンドで、もともとはピアノレストリオだったのが、サルバトーレ・ボナフィードというピアニストを入れてカルテットにしたものだ。このノットファットレコードというレーベルからはジェリー・バーゴンジのアルバムは私が知っているだけでも6枚ほど出ていて、そのうちの半分ほどを持っている。本作はオーストラリアツアーのライヴで、A面は「ソフトリー」だけ、B面も2曲だけ、とかなりざっくりした作りだが、内容もなかなかの大味で、よくいえば豪快、わるくいえば雑な部分のある内容だ。A面全部をしめる「ソフトリー」は、最後の8小節に転調がほどこしてあり、各人のアドリブを聴くうえではちょっとポイントになるが、あまり気にせずにも聴ける。長いピアノソロ、途中でフリーな感じになるテナーソロもけっこう大づかみな感じだが、とくにドラムソロはなかなか荒い。こういう演奏はライヴの場で聴いていると迫力があるが、録音で聴き直すと、大味に聞える場合もある。B面にいって、1曲目はバーゴンジのオリジナルで、バップ的なチェンジの曲。バーゴンジのソロは荒っぽいところもあるが、聴かせどころも多く、長丁場をだれさせずに聴かせるのはさすが。ピアノソロとベースソロを経てテーマ。ラストはコルトレーンのおなじみ「モーメンツ・ノーティス」で、この曲はモード曲とは逆に、チェンジの限りを尽くしたような曲なので、コードをずーっと追いかけていくと似たようなソロになりがちだが、バーゴンジはいろいろと変化をつけながらがんばってバリエーションを豊富にしている。でも、録音のせいもあるのかもしれないが、やはり荒い感じはする。もちろんその荒さが良いほうに転がるとたいへんな傑作になったりするわけだが、この曲でのバーゴンジの演奏は最初は大づかみだが次第に調子があがっていき、最後にはめちゃめちゃ良くなって、クライマックス……という理想の展開でさすがと思わせる(最初の部分が長すぎるかもしれないが、ライヴだとわかんないんですよね)。つづくピアノソロもなんだかバーゴンジと同種の雰囲気。
「FRONT END」(NOT FAT RECORDS NFR05−22)
GONZ
上記アルバムのひとつまえの、まだピアノが入るまえのスタジオ録音。ただし、バーゴンジが1曲、ピアノも弾いている(オーバーダブ?)。ここでの3人はじつにきめ細やかかつ大胆なコミュニケーションを行っていて、ものすごく気持ちがいい。バーゴンジのソロも、荒っぽさ、雑さのかけらもない、安定しているのにそれが全部豪快に聞えるようなすばらしい演奏である。エレベとパーカッションのコラボが作り出すカラフルなリズムも緻密で楽しい。やはり上記ライヴは、ライヴならではの解放感が微妙に災いしたのかも。5曲中2曲がバーゴンジのオリジナル。ラテンっぽい曲もミディアムスウィングのバップっぽい曲もコルトレーンを連想させる辛口バラード(ハーモニクスをうまく使っている)もモードっぽいシリアスな曲(ピアノが入ってるバーゴンジのオリジナルで、めちゃめちゃかっこいい。バーゴンジのブロウ(最後までひとりで吹ききる)もドスがきいて素晴らしく圧倒的。こういうのが聴きたかったのだ。バーゴンジすげーっ。A−1と並んで本作の白眉か)もラストのチャーリー・パーカー的テーマを持ったバップ風オリジナル(歌いまくり! 微妙なポストバップ的な解釈がかっちょええっ)も、どれもそれぞれバラエティにとみ、しかもバーゴンジの個性を全面に押し出した力技(といっていいでしょう)がうまく作用して、めちゃめちゃいい状態を生んでいる。これはいいなあ。とはいえ、3人で5曲という長丁場を聴き手をだれさせないためにはいろいろと工夫も必要でそういうあたりの気の使い方はなされていないのがマイナーレーベル(ブルース・ガーツのレーベルなのか?)の良さであり、また悪さでもあろう。でも、いいんです。誰もが飛びつくような歴史的傑作ではないかもしれないが、ここでのバーゴンジのブロウは何度でも聴きたくなるような凄いものなのです。この音を演奏を愛してます。