tim berne

「LOWLIFE−THE PARIS CONCERT T」(WINTER & WINTER 919 074−2)
TIM BERNE’S BLOODCOUNT

 ジム・ブラックのリーダーアルバム二枚を聴いて、どーもよくわからん、ぴんとこない、と何度も聞き返してじたばたして、結局、ほとんど同メンバーではあるが、ティム・バーンのリーダーアルバムで、ライヴという本作を買って、聴いてみた。ライヴならではの熱気があれば、かなり印象がかわるだろうと思ったからである。そして、その期待は半ば当たり、半ばうらぎられた。フリージャズ的な混沌と、ジム・ブラックのアルバムにも聴かれた複雑な変拍子を基調にした演奏が交互に出てくる感じで、なかなかよい雰囲気。おおっ、と思う瞬間も多々ある。ティム・バーンのアルトは非常にイマジネイティヴで、おもろいソロをする。かっちょええ。ジム・ブラックの変幻自在、パワフル、バカテク、かつタイトなドラムも演奏をぐいぐいリードし、それにほかのメンバーが乗っかって、怒濤のリフを繰り広げたりする部分はなんともいえない快感である。しかし……やっぱりどこか乗り切れない自分がある。それは聴いていて緊張感の切れる、ダルいところがたくさんあって、そこを我慢しないといけない……みたいな聴き方をしなければならないからではないか。これは私だけの印象なのだろうか。クリス・スピードも、いいときはすごくいいんだけど(とくにクラリネット)、テナーは、うまいなあと思うだけで、あまり胸に入ってこない。このひとたちの演奏って、ジム・ブラックのアルバムでも感じたのだが、聴いていてすごく疎外感があるのだ。悲しいなあ、入れてもらえない私としては……。世間のひとたちにはわかるものが私にはわからん……というのはすごく情けないけど、まあ、いつか「ハッ」とわかる瞬間が来るかもしれないし。第二集も出ているのだが、今は買わなくていいや。

「CAUSE & REFLECT」(LEVEL GREEN RECORD COMPANY LEVEL GREEN 22004)
TIM BERNE AND HANK ROBERTS

 これも、某クラシック〜ジャズ専門店で投げ売りコーナーにあったもの。いつものカルテットやクインテットではなく、ハンク・ロバーツのチェロとのデュオである。かなり考えたが、思い切って買ってみると、これが傑作! 昔はジャズにおけるチェロのイメージって、あんまりよくなかった。とくにフリー系の場合、後ろでちゃらちゃら効果音風に弾いているだけ、みたいな印象で、チェロが入ってると避けたりしたものだが、最近はまったくちがっていて、トリスタン・ホンジンガーをはじめ、凄いチェリストがたくさんでてきて、しょーもないサックスよりはずっとよかったりする。このアルバムも、アルトとチェロのデュオというより、「ティム・バーン」と「ハンク・ロバーツ」というふたつの個性のガチンコ勝負であって、ここまでいくと楽器なんか関係ない。それほどに昇華された、ハイレベルの音楽である。フリー系アルトは嫌いだ、と言い続けている私だが、ティム・バーンやジョン・ゾーン、マーティ・エーリッヒなどを聴くと、ああ、聴かず嫌いはあかんなあ、としみじみ思う。本作も、ほんまによかった。

「SHADOW MAN」(ECM RECORDS ECM2339)
TIM BERNE’S SNAKEOIL

 あるひとにめちゃめちゃいいと薦められたので聴いてみるとたしかにめちゃめちゃ良かった。これは凄い。ティム・バーンが凄いのはそりゃ当然かもしれないが、本作は彼の諸作のなかでもかなりの傑作だと思う。いや、もう、最高傑作と言ってもいいんじゃないか、ぐらいの印象です。何度も言ってるが、アルトが苦手なので、アルト吹きへのアンテナはまったく張っていない。だから、マーティー・エーリックもティム・バーンもジョン・ゾーンもトーマス・チェイピンも、世間のひとが聴いているよりはずっと数は聴いていないと思う。でも、この作品はとにかく凄い。1曲目は、マット・ミッチェルの、水の波紋が広がっていくようなピアノソロではじまり、そこにチェス・スミスのヴィブラホンが重なり、ECM的な幽玄な空気感が設定されるが、そこに大づかみなリズムで空間を埋めるようなドラムとアルトサックスがテーマを奏でる……サックスソロもないそれだけの演奏だが、めちゃくちゃかっこいい。2曲目は複雑なテーマをサックスとピアノが延々キメたあと、オスカー・ノリエガのバスクラが飛び出してくる。ピアノとドラムがややこしくもかっこいい、さまざまなリズムをぶつけるうえをバスクラとアルトが自在に吹きまくる。なるほど、たしかにベースは入らないかも。ベースレスであることが非常に重要なファクターとなっている。そのうち管楽器の絶叫とともに演奏が崩れていくが、その美しい崩壊感が絶妙。サックス、ピアノ、ヴィブラホンのからみも、ゆるい縛りのリズムのなかで自由なインタープレイがあり、全体としてひとつの塊が進行していく感じですばらしい。3曲目はポール・モチアンの曲で、短いバラード。ピアノの重くて暗いコードを背景に、アルトサックスが絵筆のように空間に絵を描いていく。ゆっくりゆっくり。1〜3が比較的短い演奏なのに比べて、4〜6はどれも長尺で、ひとつひとつが組曲ぐらいの長さと内容があって、聴き応え十分である。4曲目はアルトとクラリネットがふたつのラインを複雑にからみあわせるテーマが快感の曲(ピアノも入れると三本のライン)。ノリエガのクラリネットソロは、リアルで具体的なのに内省的。リズムが希薄になってから、4人によるインプロヴィゼイションのパートになる。ここからが聞きものです。即興とコンポジションが魔法のように組み合わされた、美味しい美味しい演奏がたっぷりと聴ける。かなりの譜面が用意されているようだが、それがじつに自然につながっていて、複雑さとか難解さは微塵も感じられず、ただただかっこいい音の連なりがあるばかり。そういうコンポジションの巧みさが、アルトのモーダルなブロウやフリーキーなスクリームの熱情を引き立てる。あー、かっこよすぎ。23分にも及ぶ大曲だが、さまざまな局面をスムーズにつないでいるので、まったくダレることはない。最後は力わざのシンプルなブロウもあり、演奏力、即興力、表現力、構成力……どれをとっても超一流のメンバーだからこそできることなのだと思う。5曲目はこれも長い曲で、激しいピアノソロで幕を開ける。本作中もっともガチンコの即興の要素が強い曲だと思う。テーマのあと、ピアノとアルトのデュオの場面がたっぷりとあり、そこにドラムのブラッシュとバスクラがからむ。非常に力強く、いきいきした演奏で、聴いていて興奮しまくる。複雑なテーマのあと、ドラムソロになるが、ハイハットとリムショットを組み合わせたようなめちゃめちゃかっこいいソロ。そのあと叙情的な場面になり、バスクラがその表現力の全てを駆使したようなソロになり、くーっ、しびれる(古い?)。6曲目は、ものすごく細かい動きのある、ややこしいテーマをアルト、バスクラ、ピアノがバシッと決める。それを聴くだけでもうかっこいいのです。長いテーマ部が終わると、フリーな状態になり、管楽器の吹き伸ばし中心の場面に。そこからミニマムミュージックのようでもある展開を経て、プログレのような感じもする場面に。こういうの好きやなあ、このひとら。本当は、あまりに多くの展開が矢継ぎ早に起き、それが作曲なのか即興なのか、一部が決まっていてほかが即興なのか、などと考える暇もないし、こういう具合に実況的に書いていく意味もないのだが、ついそうせざるをえないほど魅力的な瞬間がジェットコースターのように訪れる演奏の数々である。いやー、聞いていて、こんなに力が入って、疲れるアルバムもなかなかありません。傑作だけど、かなりしんどいので、何回かに分けて聴くほうがいいかも。

「SOULS.SAVEDHEAR」(THIRSTY EAR RECORDINGS THI57151.2)
BIG SATAN(BERNE,RAINEY,DUCRET)

 ビッグ・サタンというバンド名は、「大魔王」でいいんでしょうか。ティム・バーンといえば、ジム・ブラックなどとのバンドが有名だが、こっちはティム・レイニー、マルク・デュクレとのトリオで、共通しているのはどちらもベース(も鍵盤も)がいないということ。この3人というのはたいへんだと思うよ。全員一瞬たりとも気を抜けない(そういうタイプの音楽なのだ)。複雑なテーマをバシッと合わせ、ソロをし、バッキングをし、アンサンブルをやり……ああ、考えただけでもしんどい。でも、そういうしんどさがはたして彼らにあるのかどうか。なんか嬉々としてやっているのが伝わってくる。しんどさはあっても、それは心地よい緊張であり、あえて課したハードルを越える達成感もあって、けっこう楽しくやってるのかもしれない。でも、この複雑なテーマのあと、グネグネグネグネ……したソロを吹き(弾き)、しかもそのソロのなかに即興としての躍動感やパッション、偶然性なども十分感じさせ、そして、ほかのひとがソロをしているときにリフを吹いたり、からんだり……これは凄いとしか言いようがない。こういうのが好きなんやろなあ、という一言で片づけていいのか。ティム・レイニーの鬼神のごときドラミングも凄まじい。ときどき、こちらの許容範囲を超えて昂揚しまくる演奏などもあって、もうたまらん。1曲の演奏時間はどれもそれほど長くないが(一番長いので10分ほど)、このテンションで演奏できるのはそんなもんでしょう。濃密にもほどがある。こういう音楽をするには、全員がその楽器のマスターであることはもちろんだが、それだけではなく、目指しているところがかなりおかしい、ということも重要である。こんなわけのわからんことを達成するために、彼らは日々練習しまくり、音楽について考えまくっているのだろう。サウンド自体が麻薬のようなヤバい心地よさを持っている点もすばらしい。浸ってしまう。いやー、かっこいい。傑作です。

「DIMINUTIVE MYSTERIES(MOSTLY HEMPHILL)」(BAMBOO POCJ−1160)
TIM BERNE

 日本盤はアホで、ティム・バーンのリーダー作なのに「ティム・バーン&デヴィッド・サンボーン」という名義になっているうえ、帯の惹句は「ファン必聴、サンボーンの新境地がここに!」で、おいおい、リーダーはどうなったのだ、と言いたくなる。ティム・バーンが知ったら怒るのでは。しかも(これはどうでもいいことだが)、CD盤面のクレジットが「JOEJ BARRON」と誤記してあって、悲しい。しかし、内容はえげつないぐらいすばらしく、また凄まじい。冒頭、バリトンの低音、スラップタンギングによるフリーな演奏ではじまり、チェロとドラムが暴れる展開で、それだけで素晴らしいのだが、混沌とした空間で、ここにサンボーンがどうやって入ってくるのか、いや、入ってこれるのか、と思って聴いていると、突然、ファンキー(?)で複雑なリフとともにサンボーン登場……という趣向なのだ。ドラム、ギターとからむような感じでサンボーンのアルトソロが展開するが、途中からどんどん自信にあふれた演奏になっていく。そのまま突入するラストテーマはかなりの巨大なエネルギーが感じられる。ええやんか、サンボーン。ヘンフィルのコンポジションもすばらしい。2曲目はバラード風の壮大な曲調。とにかくチェロがかっこいい。たぶんサンボーンはソプラニーノを吹いている。空間的な広がりと「間」の感じられるすばらしい演奏だと思います。3曲目はドラムとギター、チェロのトリオではじまり(アフリカっぽい雰囲気か?)、2管による呪術的なテーマが乗る。そこからそれぞれの奏者が音を歪めまくるような感じの即興+コンポジションのないまぜになったアンサンブルになり、めちゃくちゃかっこいい。ギターが活躍する。4曲目はサンボーンによる叫びのようなイントロからかっこいい2管のテーマ。そのあとフリーリズムになり、バーンのバリトンのソロにほかの楽器(サンボーンはたぶんニーノ)がまとわりつくような展開になる。全員での混沌とした即興演奏のあと、ドラムをバックにソプラニーノが暴れまくり(このあたり、とてもサンボーンとは思えないエグいソロです)、最後にそこに変なリフがついてアンサンブルになる。ドラムソロになり、テーマ。いやー、こんなきょく書くジュリアス・ヘンフィルって天才だとは思うが変フィルでもあるな。5曲目はアルトとチェロが主体の美しいバラード……と思っていたら、それが異常なテンションの吹き伸ばし(弾き伸ばし)から狂気の世界へと突入する。めちゃくちゃかっこいい。このアルバムの白眉と言っていいすばらしい演奏。いや、もう絶妙の美しさ(ときどき水が滴るような音がSEで入っている)。6曲目はチェロによるフリーなイントロダクションのあと、複雑怪奇なテーマをばっちり合わせ、その後ティム・バーンがマルチフォニックスを駆使したフリーなソロ。そこにサンボーンが入ってきて、バーンはフラップタンギングで受け、ギターが加わり……というこのトリオが凄い。最後はバーンとサンボーンが完全に頭のぶちぎれたフリーに突入、ドラムが割り込み、テーマへ……。なんじゃこりゃーっ! サンボーンもどえらいことをやらされとりますなあ。7曲目だけはヘンフィルの曲ではなく、ティム・バーンが師であるヘンフィルに捧げた曲。めちゃ長くて20分以上ある。フリーな即興によるイントロからサンボーンのアルトが絶叫する(といってもいつものようにフラジオで叫ぶだけではない。本当の「叫び」なのだ)。サンボーンのこのあたりの表現力には参った。そのあとドラムが短いソロをして、全員による吹き伸ばしのテーマが不穏な空気を醸し出す。ティム・バーンが作曲面でもヘンフィルに強く影響されているのがわかる。リズミカルだが変態的なテーマが現れ、全員がその役割をわかった即興的アンサンブルになる(まあ、ギターソロか)。そして、ノイジーなギターの弾きまくりのなかにノイジーなトランペットが現れ、えっ、ティム・バーンってトランペットも吹くのか! と驚いたら、これはこの曲だけ参加のハーブ・ロバートソンでした。いや、きいてなかったもんですから……。え? この曲だけ、マーク・ドレッサーも入ってるの? そうだったのかー。とにかくその後も変態的なテーマ(リフとはいえないレベルの複雑さ)が重層的に現れては消え、それが即興とからみあっていく。たいへんな力作である。コンダクションなしでここまでできるのかなあ……(ティム・バーンが演奏しながらやっているのか?)。混沌としているような部分も必ずどれかひとつの楽器がアレンジを弾いているので、とてもクールな視線を感じる。しかし、熱い。アルトのフリーキーなソロに壮大なアンサンブルがかぶさっていくさまは圧倒的である。最後はジョーイ・バロンのこれも変なドラムのリフが延々続いて終わっていく。うぎゃー、かっこいい! このセンスは脱帽もの。いやー、この曲はこのアルバムの肝ですね。聞きとおすとけっこう疲れる。ラストはサンボーンのアルトによるイントロからテーマに入るのだが、バリトンとアルトによる掛け合いのような、かなり変わったテーマの曲。サンボーンが朗々と吹きまくる。これはいつものあのサンボーン節ですね。最後にちょっとホッとして終わるいうところかも。でも、途中から2アルトがからんで、ぐちゃぐちゃになるが、そこもめちゃかっこいい。本当によくできたすばらしいアルバムだと思います。傑作としか言いようがない。ティム・バーンのファンもジュリアス・ヘンフィルのファンもサンボーンのファンもみんな笑顔になる作品。

「INCIDENTALS」(ECM RECORDS ECM2579)
TIM BERNE’S SNAKEOIL

 最近のティム・バーンはどれも凄いし、面白いのだが、だからこそ新譜が出ても、「今回もいつもどおり凄いんでしょ。わかってますって」という感じで全部は追いかけていなかった(少なくとも前作は聴いてない)。でも、今回のはなんだかネットでえらい評判になっているし、久々に聴いてみようと思ったら、うひょー、めちゃくちゃ凄いやん。これが「相変わらず」なのか「今回飛び抜けて」なのかはよくわからんが、以前聴いたやつもめちゃ凄かったような気がするので、たぶんティム・バーンは全部凄いのだ。このバンドの凄さは、複雑で緻密なのにノリノリなコンポジション、それを楽々こなすメンバーの技術力、そしてそのがっちりした構成を自在に彩っていく個々の自由度の高さと即興能力……という、文章にしてしまえば身もふたもないというか、あまりに当たり前のことになってしまうのだが、こうして書いた文章のそれぞれのパートについて、たとえば、ティム・バーンの作曲・アレンジ能力のあまりの高さに瞠目しまくる、とか、楽器編成の妙、だとか、対位法的にからみつき、ひたすら即興に没入するのに時期が来たらぴたっと譜面に戻るすごさに愕然とする、とか、シンプルにリフの繰り返しとダイナミクスで盛り上げる、とかいった驚いたり、興奮したり、感激したりする要素があまりに多くて、しかもそれがめまぐるしくどんどん目のまえを通り過ぎていき、膨大な情報量のなかで溺れて死んでしまう。この快感! 聴いていると、わくわくというより、どきどき、ずきずきしてきて胸が痛んでくるほどの、この凛と屹立している感じはなんなのか。もはや変拍子という言葉さえ無意味なコンポジション、そんなコンポジションと同等、あるいはほぼ同義語であるアレンジ、そして強力なソロのそれぞれが凄くて、しかもたがいに結び合っている……などというのはここにぐだぐだ書く必要もなく、聴いてもらえればわかるのだが、正直、そんなことぐらいしか書くことがない。それぐらい「聴いてもらわんとわからん」音楽。最近そういうの多いな。私の言葉がついていっていない、ということかもしれない。評論家のひとはたいへんだと思います、マジで。傑作。

「THE COANDA EFFECT」(RELATIVE PITCH RECORDS RPR1103)
TIM BERNE/NASHEET WAITS

 ティム・バーンといえば超絶難しい作曲と即興の融合を長年手掛けてきたひとで、しかもそれが聴くひとにはなんの難解さも感じさせず、ただただ快感なだけ……という一種の魔法のような音楽を続けてきたとんでもないミュージシャンである。本人をはじめとするメンバーのテクニックや音楽性が前提になっていることはまちがいなく、ほかのメンバーではあんな演奏はできないのである。しかし、そのティム・バーンがここではナシート・ウェイツのドラムだけを相手にして、(ほぼ)純粋なインプロヴァイズドなデュオを行っている。ところどころ作曲されたようなリフが出てくる場面もあるのだが、その場で即興的に出てきたリフなのか、事前に用意されていたものかはわからん。しかし、いわゆるフリージャズとかフリーインプロヴァイズドミュージックではなく、コルトレーンの「インターステラー・スペース」のようにドラムはリズムを刻み、サックスは(ときにスクリームすることもあるが)具体的なフレーズをひたすら吹きまくる。両者は融合し、演奏はひとつになり、盛り上がりまくる。もうめちゃくちゃ楽しい。ティム・バーンの、コンポジションを中心とした昨今の演奏がすばらしいのはもちろんだが、本作は個人的には大々々々愛聴盤になる予定。しかし、ティム・バーンはいくつになっても若々しいなあ。溌剌としてるもんなあ。ナシート・ウェイツのドラムもとにかくただただ凄まじいとしか言いようがない。完璧なコラボレーションです。こういう演奏はえてして、力で押せ押せなだけで一本調子、とか、繊細さに欠ける、とか言われがちだが、本作についてはそういう批判は当たらないと思う。激しさ、力強さのなかにきめ細やかな配慮が十分感じられる「即興」である。ライヴだが、迫力のある録音もすばらしいです。これは傑作としか言いようがない。すばらしい。かっこいい。最大の賛辞を贈りたいです。