「CHU」(SONY MUSIC JAPAN INTERNATIONAL INC. EIPC 604)
CHU BERRY AND HIS STOMPY STEVEDORES
レオン・チュー・ベリー。名前がいいですよね。昔から好きなのだが、この、バーのカウンターで猫が煙草を吸っている有名なジャケットのエピックのアルバムは、LP時代、ジャケットひかれてずっと探してはいたのだが、中古盤がけっこう高くて持っていなかった。よく、チュー・ベリーはアップテンポではすごいけど、バラードはいまいち、という誰が言い出したのかわからない評価が定着しているようだが、このアルバムの「ゴースト・オブ・ア・チャンス」を聴くかぎりではバラードも十分いける。心地よいビッグトーンとビブラート、そして、縦ノリのソロフレーズ。ぜんぜん古くさくないよね。リーダーセッションだけでなく、キャブ・キャロウェイのビッグバンドやテディ・ウィルソンのビッグバンドの録音も収録されている。
「THE BIG SOUND OF COLEMAN HAWKINS & CHU BERRY」(COMMODORE GXC3146)
このLPを買ったのは学生時代で、中古で入手した。レオン”チュー”ベリーというひとを一度聴いてみたかったのだ。コールマン・ホーキンスやベン・ウェブスター、レスター・ヤングあたりはまだしも、チュー・ベリーとかになると、普通のジャズ喫茶ではなかなかかからない。例のバーに猫がいるマンガのジャケットのやつが欲しかったのだが、当時は入手不可能だったので、とりあえずコールマン・ホーキンスとのカップリング盤である本作を買ったのだ。私の当時の耳学問では、チュー・ベリーはバラードでは一歩を譲るが、アップテンポの曲での迫力はホーキンスに勝るとも劣らない……みたいな予備知識があったので、そういう観点から聴いてみたのだが、まずA面から。全体にホーキンスは絶好調でアップテンポからバラードまでなにをやっても隙なし。しかもA1から4まではロイ・エルドリッジのトランペットがびっくりするほどいいし、ベニー・カーターのアルトも(まるでホーキンスのおかぶをうばうように)ラプソディックで流暢ですばらしいのだ。くつろぎと迫力が同居するといったらよいか、とにかくA面1〜4にかんしては、ホーキンス? そんな古臭いもん聴いてられっかよ、というひとにも自信をもってお勧めできる名演ばっか。A5〜8は、ホーキンスはあいかわらずゴージャスでワイルドでスモーキーですばらしいが、クラリネットが入るとなぜか空気がオールドジャズっぽくなる(まあ、ほんとうにオールドジャズではあるのだが)のでまた1〜4とはがらりとちがう。ピアノのアート・テイタムがすごすぎる。さて、B面はチュー・ベリーのセットだが、ロイ・エルドリッジはここでもやはり快演。チューは、かなり個性的だなあ。アップテンポでの息の長い、くねくねとうねるようなフレーズは癖のあるハーブのように、なんじゃこれと言いつつ病み付きにさせられそうな悪魔的魅力がある。じゃかじゃかいうリズムギターはちょっと苦手かも。スローナンバーが苦手という評があるチューだが、B2の「スターダスト」やB3「ボディアンドソウル」などを聴く限りではまったくそうは思わない。原曲のメロディをまもりつつ、太い音色で情感ゆたかにつづっていく演奏はええと思うけどなー。B4のシド・カトレットのドラムソロもお見事。後半はメンバーが変わり、ラッパがホット・リップス・ペイジでこれもいい。でもやっぱりチュー・ベリーのソロが光ってる。ゆったりとしたテンポで演奏されるワンホーンのサニーサイドもなかなかええんちゃう? ホーキンスとチュー・ベリーは半分ずつなのだが、吹き込みの少ないチューの項に便宜上入れておく。