alex blake

「NOW IS THE TIME LIVE AT KNITTING FACTORY」(BUBBLE CORE RECORDS/BLUES INTERACTIONS PCD−24034)
ALEX BLAKE QUINTET FEATURING PHAROA SANDERS

 アレックス・ブレイクというひとはサン・ラ、フランク・ロウ、ドン・ピューレン〜サム・リヴァース、チャールズ・ボボ・ショウらとの共演作でよく知られているほか、ビリー・コブハム、カルロス・ガーネット、レニー・ホワイト、マッコイ・タイナーなどなどというメジャーどころの大物ともがっつり共演していて、フリージャズとメインストリームのどちらもいけるひと、という認識だったが、本作はフロントにファラオ・サンダースを迎えた作品、しかもライヴということでめちゃくちゃ期待したことを覚えている。ピアノがジョン・ヒックスというのも凄そうじゃないですか。正直言って、もっとめちゃくちゃ凄いのかと思ってたほどではなかったが、リーダーのブレイクのがんばりは相当なもので、聴きごたえは十分である。私が、ファラオがもっとぶちぎれた演奏をするのでは……と勝手に思っただけだ。ファラオ・サンダースというひとは、ハーモニクス、マルチフォニックス、オーバートーン、フラジオなどを駆使したスクリーミングの魔術師であり、アコースティックノイズマシーンとしてワンアンドオンリーのひとであると同時に、スピリチュアルジャズのひとでもあって、それはどちらもすばらしいのだが、本作はそのどちらでもなくちょっと「ジャズ」に比重が傾き過ぎたかとも思うけど、それは当然、リーダーであるアレックスの意志でありましょう。もっとギャーッと言ってくれよ、という姿勢で聴くとやや物足りないかもしれないが、日本語ライナーを書いているかたの「70年代はアフリカ神秘主義に立脚した激烈なアフロ・ジャズによってシーンをリードしたファラオだったが、80年代以降テレサやヴィーナスに残した録音を聴く限り、コルトレインの善良なコピーに過ぎない虚弱な演奏家に堕してしまっていた」という文章はちょっとひどくないですか。このひと、自身がライナーを書いているこのアルバムの収録作でさえ、ばしばし斬って捨てていて、とにかく4ビートが嫌いなのだな、というのはわかるが、4ビートは定型的でよくなくて、アフリカのリズムはよい、というのはアフリカのリズムも定型的やろ、と思う。本作収録作中で認められるのは6曲目と7曲目だけだそうで、この2曲ともファラオのプレイをもっと聴きたかったというのが本音だそうである。アレックス・ブレイクのリーダー作なんやけどね。たしかに6曲目のファラオのソロはいちばん炸裂しているけど、それは4ビートではないから、ではないでしょう。ファラオはどんなリズムでも、そう吹きたいと思ったら圧倒的なブロウを繰り広げられる。なんか「ファラオがいまいち」→「4ビートだから」という論調がすごくひっかかる。まあ、私がファラオの音が聴けたらたいがいのものはOKというダメなファンだから、ということもあるかもしれないが、テレサの作品を「コルトレインの善良なコピーにすぎない」と言われるとこれぐらい腹を立てても許されるのではないかと思う。「善良」という言葉を使っているのがものすごく嫌味な侮蔑の文章だよなーと思う。なお、6曲目はおそらくオーバーダビングがなされていてテーマのテナーがハモっている。