「TWO STEP FROM THE BLUES & HERE’S THE MAN」(P−VINE RECORDS PCD−2006)
BOBBY BLAND
超名盤の2in1である。すごいよねー。ジャズでいうと「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」と「カインド・オブ・ブルー」の2in1みたいなものか。その昔、ボビー・ブランドにはなんの興味もなかったが、その当時、これはさすがに聴いてみたいと思って買ったのだが、正直、あまりの充実さ加減にちゃんと聴けてなかったと思う。あまりにすごいアルバムをくっつけるのも考え物である。しかし、こうしてちゃんと今に至るまで聞き続けているのだから、まあ、得したのだろうなあ。ブランドをはじめ、まあ、よく知らないんだけど、ジュニア・パーカーとかリトル・ミルトンとかZZヒルとか……そういうゴージャスなソウルブルースみたいなのがよくわからないのでアレなのだが、さすがにこの二枚は感動で身体が震えるような箇所がいくつもある。リズムも洗練されているわけではなくめちゃくちゃいなたいし、ホーンアレンジはカウント・ベイシーかライオネル・ハンプトンかと思うほどジャズ的なのだが、そういうもろもろがあいまってグワーッと攻めてくる。ウェイン・ベネットのギターもすばらしすぎてため息をつく感じ。ブルースではなくR&Bやソウル的な構造の曲が多いのだが、とにかくヒット曲を作ろうというスタッフの気迫というか熱量を感じる。でも、こういう良い意味でのコマーシャリズムみたいなものはモータウンやスタックスにつながっていくのだろうが、私はやはり家内制手工業的なブルースの方にひかれる。それにしても本作はリズムが強烈で、それを手玉に取るようなブランドの歌い方には涙がちょちょぎれる。曲調はねっとりと甘めで、聴き手に媚びてはいないのに説得力があるのはボーカルの力としかいいようがない。ガツン! と爆発するシャウトもしみじみかっこいい。コーラスが入ったり、ストリングスが入ったり、ホーンセクションが入ったりするのも売らんかなという気合いのあらわれだと感じる。ときに大げさな曲調のものもあるが、それを自然に感じさせるほどブランドのボーカルが強力なのだ。正直、こういうタイプのブルース(R&B)はほとんど聴かないのだが、このアルバム(2in1)だけはずーっと愛聴しております。実は、昔ながら(?)のブルースもちょいちょい入っていてそれもまた聴きものだし、テナーサックスが活躍している点も私としては気に入ってます。傑作!