david bond

「THE EARLY SHOW(LIVE AT TWINS JAZZ)」(CREATIVE IMPROVISED MUSIC PRODUCTS ON LOCATION CIMPoL 5004)
DAVID BOND QUINTET

 デヴィッド・ボンドという白人のアルト、ソプラノ奏者のリーダー作。レーベル名がいかついし、本人も「デューイ・レッドマンの精神のもとに」みたいな文章をライナーに寄せているので、さぞかしエグいフリージャズが展開するのかと思っていたら、さにあらず。かなり正統派なハードバップ〜モードジャズという雰囲気だった。まあ、テナーがアンドリュー・ホワイトなので「そらそやろ」ということだが。私は、アンドリュー・ホワイト目当てで買ったのだが、ホワイトは大活躍していて満足しました。主役のデヴィド・ボンドも真摯で丁寧で熱いブロウを繰り広げている。全曲オリジナルで、ガッツのある演奏で、デヴィッド・ボンドは十分リーダーとしての存在感を示している。アンドリュー・ホワイトというひとは、クラシックのオーボエ奏者で、ウェザー・リポートにも参加していたエレベ奏者で、コルトレーンのソロ解析の第一人者で……と非常に知的な印象のあるひとだが、なぜかテナーを吹くと個性丸出しのキツい演奏をする。めちゃくちゃ上手いのだが、本当に自由に吹きまくるのですばらしい。ピアノのボブ・ブッタというひとはときどきガンガンと力強くフリーなバッキングやソロをするので、その影響(?)でバンドもグッと昂揚する。ボンドのアルトとホワイトのテナーのからみがこのアルバムのいちばんの聞きどころだと思うが、それはもう随所に出てきて、からんでからんでからみまくるが、めちゃくちゃ楽しい。後期コルトレーンのように、アンドリュー・ホワイトのソロは、モードを突きぬけてフリーキーな表現になっている感じで、そういう「最初はきちんした枠組みのなかでの演奏のはずが、パワーで押していくと、いつのまにか調性やリズムの壁をぶち壊してしまい、ぐちゃぐちゃで自由な演奏になる」とう展開は私の好むところである。3曲目などはそれが顕著で、このアルバムの白眉といえる(タイトルは、そのままずばりの「コルトレーン」)。4曲目の「デュー・ドロップス・ライオンズ」という曲は、もしかしたらデューイ・レッドマンに、そしてジミー・ライオンズに奉げたものかもしれない(ライナーにはそんなことは書いていない)。フリーなリズムでの美しいバラードである。そして、ラストの曲は「サン・ラ・スウィング」というタイトルからもわかるようにサン・ラへのトリビュートで、ウッドベースが大きくフィーチュアされる。そして、テクニカルで挑戦的なピアノも(全体に、ピアノの奔放な演奏が本作の鍵となっている)。このレーベルはケイデンス系なのかなあ。本作のまえに出ていたものは、ジョー・マクフィーのトリオX、オディアン・ポープ、ジョー・マクフィーとドミニク・デュバル、サリム・ワシントン……と硬派なジャズばかりである。本作もまたそのひとつで、シリアスな演奏が詰まっている。地味だが、手応えのある内容でした。