ben branch

「THE LAST REQUEST」(CHESS RESORDS UICY−75983)
BEN BRANCH & THE OPERATION BREADBASKET & CHOIR

ベン・ブランチというひとは私としては完全にノーマークで、かなりまえにあるアルバムガイドに載っていたので名前は知っていたが、音を聞いたのはこのアルバムがはじめてだ。キング牧師に捧げられており、マーティン・ルーサー・キングが亡くなった約2週間後に録音された、まさに生々しい作品ではあるのだが、音を聴くかぎりではそういった社会性とか追悼とかいうより、純粋にゴスペル〜R&Bとして楽しめる内容である。メンバーがとにかくすごくて、管楽器の4人についてはよく知らないが、ギターにウェイン・ベネット、ベースにフィル・アップチャーチ、ドラムにモーリス・ジェニングスの名が見える。ソウルフルなボーカル(というかシャウト)がフィーチュアされた曲が多いが、それを盛り上げるクアイア、かっこいいリズム・ギター、オルガン、エレベなどによるサウンドをしっかりとリードしているのはベン・ブランチのテナーだ。パッと聴くと、アルトかなと思うほど細みの音だか、これがまさにブルース〜ファンクテナーの王道を行くすばらしくも凄まじいプレイを全曲にわたって繰り広げる。このひとのテナーブロウで、曲がめちゃめちゃ盛り上がるのだ。いやはやたいしたもんです。ホンカーのように大げさではないが、そういったラフプレイもちゃんと行っている。しかし、このひとの持ち味は、どこを切ってもするめのように出てくるスウィングしまくりジャンプしまくりウェイルしまくるフレージングで、とにかくうまい。のびやかで、ブルージーで、ファンキーで、流暢で、1曲目から完全にとりこになった。なにもかもがうまくいっているアルバムで、これを聴かないとブルーステナーは語れない、と言い切れるぐらいの名盤だと思う。まあ、実際にはブルースはやってなくて、ゴスペル系なのですが。ウェイン・ベネットのギターもめちゃくちゃ感動的で、言うことなし。だれが聴いても気に入るタイプの音楽だと思う。ラストに「リパブリック讃歌」が入ってるのもおもしろい構成。いやー、これははまりました。