cecil brooks 3

「THE COLLECTIVE」(MUSE RECORDS MCD 5377)
CECIL BROOKS V

 大傑作ではないでしょうか。今から考えればえげつないメンバーによるストレートアヘッドなジャズ。冒頭から最後までひたすら呆然とするようなソロの連続。たぶんゲイリー・トーマス参加ということで購入したのだと思うが、当時M−BASEだったグレッグ・オスビーもここではアコースティックなプレイに徹しており、ピアノはそのM−BASEのジェリ・アレン、ベースはロニー・プラキシコという驚くような豪華メンバーだが、本作録音のころはまあみんな若手だったのかなあ。なにしろ30年以上まえである。しかも、本作が特異なのは、プロデュースがヒューストン・パースンであるという点で、ソウルジャズ的な演奏を本領とするパースンがこのめちゃくちゃエグいアルバムを……と考えると、ジャンル分けとかスタイルがどうかということが本当に意味を持たない、ということがわかってすがすがしい。演奏は、何度聴いてもほれぼれするようなカッコいいテーマとソロのチェイスとそれをあおるバッキング、ビシッとしたアレンジ……などなど聴きどころだらけである。グレッグ・オスビーはたまりにたまったものを爆発させるような鮮烈で弾けまくったソロ、ゲイリー・トーマスはメカニカルなフレーズを独特の濁った音色(アジャストトーンだが今は知らん)で吹きまくる。ジェリ・アレンは今聞いてもめちゃくちゃ個性的な、天才的としかいいようがないソロで圧巻。2曲目のスタンダードのバラード(ボーナストラックのロングバージョンとともに、最高のオスビーの演奏)などでオスビーやアレンが聴かせる演奏は、M−BASEでのものとはちがって(それが悪いと言ってるのではない)、音色のすみずみまで気を配ったすばらしいものであります。とくにオスビーの朗々とした音色での演奏は、スティーヴ・コールマンよりは伝統的な演奏で、堂々たる成熟ぶり。4曲目でのソプラノもすばらしい。5曲目はベニー・ゴルソンの曲で本作ではもっともハードバップ的な演奏かなあ。6曲目もファンキーな感じのウエス・モンゴメリーの曲(ブルース)。ベースソロ、ドラムソロがフィーチュアされるが非常にオーソドックスである。ラストはなぜか「テンプテーション」で、短い演奏だが、テナー、アルト、ドラム……の最良のソロがフィーチュアされる。リーダーのセシル・ブルックスが裏方に徹しながらもこのゴージャスなメンバーを完璧にまとめている点もすごいと思う。ライナーを読むと、オスビーのプレイをアーサー・ブライスみたいだとか書いてあって面白い。傑作!