「THE WILDEST CLAN/APPACHE!」(JASMINE RECORDS JASCD346)
SAM BUTERA AND THE WITNESSES
このひとは白人R&Bテナーとして超有名なわりに、名前の発音がよくわからない。私はずっとバッテラだと思っていたが、バテラ、ブテラ、ビュテラ、バエーラ……など検索するとバラバラである。本作は、2アルバムをカップリングしたお買い得CDである。ルイ・プリマのところで活躍したひとで、ときどきこうして自己名義のアルバムを作る。基本的にはその当時のスウィング〜ジャズ〜ブルース〜R&B〜ロックンロールヒット曲をカバーして演奏するという方針で、その合間に自分をフィーチュアしたサックスインストが入る……みたいなパターン。しかも、超お気楽で呑気。呑気すぎて、いまいちぐいぐい来る感じには乏しいが、そのテナープレイだけ聴いてるとこれはすばらしくて、ブラックミュージシャンとなんら変わらないタフでブルージーなテナーが吹けるひとだ。その音色といい、ニュアンスといい、たとえばブーツ・ランドルフのようにブラックでアーシーなテナーで感動的である。それにしても、ヒットパレードのように有名曲を揃えたものだ。私が知ってる曲だけでも「レット・ザ・グッド・タイムス・ロール」にはじまり「ロマンス・ウィズアウト・フィナンス」「ジャンバラヤ」「マラゲーニャ」「コ・コ・モ」「セシボン(完全にボーカルはサッチモの真似で、途中、サヨナラ・スキヤキとかめちゃくちゃになる)」「アパッチ(これはヒルビリーサックスっぽい。途中でドボチョン一家の「どっちゃかべっちゃか」そっくりのリフがあって笑える)「アイム・オールド・カウハンド」「マイ・フーリッシュ・ハート」「ワン・ミント・ジュレップ」などなど。そこにちょろっと登場するバテラのテナーがかっこいいわけだが、その合間に「スウィンギン・サム」とか「サム・ズ・ブギー」「サム・ズ・ブルース」といった「サム」が入った曲名の、バテラのロッキンテナーを存分に聴けるインストがあって、それがやっぱり一番かっこええ。いわゆる「白人が聴くブラックミュージック」という位置づけなのかもしれないが、少なくともテナーに関しては文句のつけようがないぐらいええ感じである。