henry butler

「VIPER’S DRAG」(IMPULSE! 0602537812837)
HENRY BUTLER−STEVEN BERNSTEIN AND THE HOT 9

 ヘンリー・バトラーというニューオリンズ音楽ファンならだれでも知っている(がもしかしたらモダンジャズのファンは知らないかも)盲目のピアニストの晩年の傑作。セックス・モブなどで有名なスティーヴン・バーンスタインと組んで、かなり先鋭的なコンセプトとニューオリンズの伝統に根差したものが見事に合体した演奏。バーンスタインのセンスとバランス感覚が上手く働いている。1曲目に代表されるようなガンガン行くリズムの曲もめちゃくちゃかっこいいが、適度にレイドバックした曲もすばらしい。ものすごくオールドスタイルの(プリザベーションジャズバンド的というか……)の曲もあるが、それらもノリノリでいい感じ。バトラーのピアノは、プロフェッサー・ロングヘアやジェイムズ・ブッカーなどを連想するまさにニューオリンズ的な跳ねるリズムとコロコロと転がる可愛らしいファンキーさ、ドスの効いたビート……などがあり、聴いていると笑ってしまうような楽しさに満ちている。5曲目や6曲目のブレイクとかかっこよすぎる。7曲目(「キング・ポーター・ストンプ」だ!)のピアノなど、ニューオリンズの古い音楽と今の音楽(ファンクその他)が混ぜ合わされていて、なんの違和感もない。そのあたりもバーンスタインのマジックだろう。8曲目ラストの単音ピアノも渋い。管楽器のメンバーも(たぶん)若いひとたちなのだろうが、バリバリ吹いていて、しかもバトラーの音楽性をきっちり守っていて、感動的ですらある(アンサンブルとしてはバリトンサックスが、ソリストとしてはテナーが活躍!)。バトラーの歌もいい感じです(ラストの9曲目はバトラーの曲ということになっているが、ニューオリンズ全体の財産としての「アイコ・アイコ」だ。ボーカルも洒脱だし、ピアノがほんとにすばらしい)。