jaki byard

「EMPIRICAL」(MUSE RECORDS MCD6010)
JAKI BYARD

 ジャッキー・バイアードの凄さはミンガスのところで弾いているのをちらっと聴くだけでもわかるが、とんでもない音楽性と技術と破壊力を兼ね備えたピアノの爆弾のようなひとである。本作はピアノソロだが、ひとりとはとても思えないオーケストラのようなゴージャスさと、ロックバンド並の豪快なドライヴ感と、ひとりならではの自由さが同居するすばらしい作品になっている。ジャッキー・バイアードのことを「ひとりピアノ史」というような形容をするときがあるが、サイドマンではちょっとわかりにくいそのあたりの感じが本作では「まさにそのとおり!」と思えるような演奏になっていて、ラグタイムからストライド、ブギウギ、ブルース、スウィング、バップ……となんでもありで、しまいにはフリーにも到達するのだが、そのすべてにブラックミュージックの要素がまんべんなくまぶされている。しかもクラシック的な部分もあり、どれだけ奥深いのだこのおっさん、と感嘆するしかない。本作は10曲中6曲がオリジナルという意欲作でもあるが、スタンダードとかオリジナルとかの別を考えず、ただただ大きな音で流し、そのタッチに聞き入っていれば至福になること疑いなしの傑作であります。