「LOVE,PEACE AND SOUL」(SAVOY JAZZ SVY15878)
DON BYRON NEW GOSPEL QUINTET
ドラムにフェローン・アクラフを擁したドン・バイロンのワンホーンバンド(女性ボーカルひとり入り)に、ブランドン・ロス、ヴァーノン・リード……といったゲストが入る編成でのモダンゴスペルアルバム。ドン・バイロンがやるのだからきっとかなり変なことになっているのだろうと思って聴くと、1曲目冒頭、いきなりクラリネットがラフでフリーキーな感じで入ってきたので、おっ、と思ったら、その直後ボーカルが入ってからの展開は、まさにポップな現代ゴスペルで、リードボーカルとコーラスのコールアンドレスポンスや、ファンキーなドラムなど、ただただ楽しい。唯一変な部分がリーダーのクラリネットソロ……というかなり変わった音楽性のアルバム。我々、楽しくゴスペルをやろうと思っているのに、あんただけなんで変なことしてるの! あんただれや。あ、リーダーでしたか、すんまへん……的な感じ? ゴスペルの父トーマス・A・ドーシーと、左利きギターのゴスペルシンガー、シスター・ロゼッタ・サープに捧げたアルバムで、ほとんどの楽曲はドーシーのものである。長文のバイロンによるライナーに書かれているとおり、バイロンの音楽的バックグラウンドはこのふたりからもたらされたものだそうである。リードボーカルの女性(初期のリヴィング・カラーに参加していたひとらしい)がもう少し個性があればと思うが(すごく上手いです。有名なひとかも)、いや、面白かったですよ。バイロンはかなりの曲でしっかりとしたテナーサックスソロを吹いている。全体にもっとフリーキーな感じか、現代音楽的なものかと思っていたが、真っ向勝負に近いエンターテインメントアルバムでちょっと驚きました。バイロンの「思い」というのはよくわからない面もあるのだが、エンターテインメントであると同時に真摯な「バイロンのゴスペル」になっていると思う。とても美しい。