「LIVE AT THE DYNAMO」(DISQUES FUTURA ET MARGE MARGE45)
TRIBUTE TO ALBERT AYLER
1曲目は「ミュージック・イズ・ザ・ヒーリング・フォース・オブ・ジ・ユニバース」だが、冒頭の声(ロイ・キャンベル?)はわざとか間違えたのか「ヒーリング・パワー」と言っている。まあ、意味は一緒だ。最初はポエット・リーディングに静かな感じでサックスやパーカッションが入り込んでくるかそれが次第に熱を帯び出して、混沌としつつも力強いリズムを感じる「場」のなかでテナーとトランペットが荒れ狂う。2曲目はこの録音の10日ほどまえに死去した南ア出身の歌手ザンジール・ミリアム・マケバの曲で、マケバに捧げられた演奏。じつは1曲目とつながっている。カウベル(?)かなにかのシンプルなビートとベースの骨太な低音に乗って2管が朗々とテーマを奏でる。マクフィーのグロウルしながらの力強いソロは本当にかっこいい。このひとは、全然上手くないかもしれないが、そんなことはどうでもいい。ジャズ界の宝である。この武骨で、自然体で、圧倒的な存在感のあるブロウのまえには細かいことなどどうでもよくなってしまう。すばらしい。そして、ロイ・キャンベルも同じようなタイプだと思う。ジャズだのインプロだのいう以前に、とにかく「その場で感じたことを吹く。ただそれだけ」と言ってるような気がする。おおらかで豪快で深い。ウォーレン・スミスの躍動感あふれるドラムも印象的だし、ウィリアム・パーカーのソロもかっこいいっす。3曲目は(おそらく)このライヴの直前に大統領への当選がほぼ確実になった合衆国はじめての黒人大統領バラク・オバマに捧げられた即興。途中でみんなが「イエス、ウィー・ディッド」(と聞こえる)と何度か激しく叫んだあと、アイラーの「トゥルース・イズ・マーチン・イン」になる。混沌としたなかにパワーがある。オバマが辞めてトランプになった今、この演奏を聴くとかなりへこむがしかたがない。4曲目はドン・チェリーの「DC」とアイラーの「ヴァイブレイションズ」のメドレー。速いビートのうえで展開するアグレッシヴで八方破れなトランペット。マクフィーはテナーでじっくりと自由な演奏を聴かせる。ここでのマクフィーのテナーは本当にすごい。それにからんでくるノイズなトランペット(ほとんどヴォイス)もすごい。最後はキャンベルは竹笛を二本同時に吹いていてドン・チェリーっぽい。5曲目はアイラーの弟ドン・アイラーの「プロフェット・ジョン」つまり預言者コルトレーン。ええ曲や。トランペットの奔放としかいえないソロ、そしてマクフィーの内臓をぶちまけたようないきいきしたソロ。ウィリアム・パーカーの相当長いアルコソロもまったくダレることがない。ラストの6曲目はアイラーの「ユニバーサル・インディアン」。こうして聴いてみるとアイラーの曲ってシンプルかつどこかしらおかしい、狂った要素があり、耳につくなあ。いろいろなミュージシャンがいまだに演奏し続けている理由がよくわかる。まあ、本当にちょっとしたリフなのだが、マクフィーたちはちゃんとテーマをつねに感じさせるソロを展開していて、お見事です。というわけで、じつに活気ある演奏が詰まっていて傑作だと思いました。だれがリーダーというわけでもないのだろうが、最初に名前の出ているロイ・キャンベル・ジュニアの項に入れた。