「JUMPIN’ WITH AL」(BLACK & BLUE BB873.2ND215)
AL CASEY
これは珠玉のようなアルバム。ブラック・アンド・ブルーというレーベルは大好きなのだが、LP時代はフランスからの輸入盤はほかの国からのものよりもかなり高くて、なかなか買えなかった。本作もCDで入手。アル・ケイシーはファッツ・ウォーラーとの演奏が(たぶん)いちばん有名だが、アコースティックでもエレキでもシングルトーンの絶妙な音づかいで渋く歌い上げていく演奏は心に染みる。フレーズを口で歌いながら弾いているが、まるで邪魔にならないし、味わいにもなっている。ときどき入れる合いの手(インタープレイというより合いの手といったほうがしっくり来る)も洒落ている。ふたつのセッションが収められており、前半はギターカルテットで、ピアノがなんとジェイ・マクシャン。スウィングしないわけがないおっさんである。頬の肉を揺らしながら、にこやかにピアノを弾いている姿が目に浮かぶ。このカルテットによる演奏は選曲も「ロゼッタ」「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」「アイム・ビギニング・トゥ・シー・ザ・ライト」それにスローブルースとどれも最高に楽しいのだが、個人的には後半に興味が行く。というのは、わが最愛のテナー奏者(のひとり)アーネット・コブが入っているからで、しかも5人編成だが、そのうちのひとりはなんとタップ・ダンサーである。73年という時期に、タップダンサーが入っている録音と言うのもなかなか珍しいのではないか。そして、ピアノ(オルガンは弾いていない)はミルト・バックナーである。最初の「ジャスト・ユー・ジャスト・ミー」はタップ(軽快で、三連符が基本になってて、すごい快感)とギター、そして、コブのテナー、ピアノがたっぷり聴ける。とくにコブは絶好調で、コピーしたくなるほどのすばらしい引き締まったソロである。2曲目はシャッフルっぽいリズムの循環の曲で、ケイシーのごつごつしたノリのギターソロは最高。続くコブのソロもガッツのあるブロウにつぐブロウで大迫力。恐れ入るしかない。スウィングジャズですなー。3曲目はタップとギターのコラボやギターとピアノのコラボが抜群に楽しいし、ピアノがベイシーのシャイニー・ストッキングっぽいフレーズを弾いたりして、めちゃおもろいのだが、残念ながらコブが出てこん。つまり結局、コブの出番は2曲だけなのだ。あとは別テイクだが、これももちろんいい演奏。ギター好きは聞くべし。もちろんコブファンも。