「IN CHICAGO」(ASIANIMPROV RECORDS AIR0063)
JEFF CHAN
このジェフ・チャンという、おそらく中国系アメリカンのテナー〜ソプラノ奏者のことはよくしらん。ネットで調べても、結局よくわからなかった。いい音してる、パワーもあるテナーマンで、オーネット・コールマン的な古いフリージャズを指向しているらしく、私の好みである。テナーだけでなく、ソプラノもええ音してる(どっちも、ちょっと音程がふらつくし、ソプラノはときどきチャルメラみたいにひゃらひゃらするが、気にならん)。このアルバムを聴いただけなので、はっきりしたことはいえないが、やや個性に欠けるかもしれない。でも、きっとライブに接したらしみじみと心に残る、意味のある演奏を繰り広げるのではないか……そんな気持ちにさせてくれる、質実剛健、手抜きなしの朴訥な味わいのテナー吹きである。あまりよくしらない奏者を、誰かにたとえるというのはよいことではないかもしれないが、あえて、似た奏者を捜すと、たとえば、テナーを吹いたときのチャールズ・ブラッキーンとか、あと(タツ・アオキがベースを弾いているからかもしれないが)フレッド・アンダーソンも連想させる。そんな雰囲気。曲は1曲をのぞいて、全部リーダーのジェフ・チャンの作曲で、これがどれもええ曲なのだ。コンポーザーとしても一流のひとだと思う。テナー〜トランペット〜ベース〜ドラムというカルテット編成で、ベースがおなじみタツ・アオキ、ドラムも有名なチャド・テイラーだが、トランペットのアミーン・ムハマッドというひとは私は寡聞にして知らない(非常に力強いトランペット奏者で、途中で披露するホラ貝もいい味だしている)。このトランペット奏者が、録音のすぐあとに亡くなっており、このアルバムは彼へのデディケイション作でもある。タイトルにわざわざ「イン・シカゴ」とことわってあるぐらいだから、ジェフ・チャンはふだんはどこかよそで活動しているのだろうが、ネットで調べても、シカゴでの活動と、あとサンフランシスコでの活動しかわからなかった。実力のある人っていっぱいいるもんだなあ。