james clay

「THE SOUND OF THE WIDE OPEN SPACES!!!」(RIVERSIDE1178)
JAMES CLAY & DAVID ”FATHEAD” NEWMAN

おいおい、この組み合わせは渋すぎるやろ、と言いたくなるような2テナー。しかも、ピアノがウィントン・ケリー、ベースがサム・ジョーンズ、ドラムがアート・テイラーとくれば、いくら私でもテキサステナー的なゴリゴリのテナーバトルを期待するわけにはいかない。レーベルもリバーサイドだしね。デヴィッド・ファットヘッド・ニューマンもソウルジャズやジャズロック的な演奏もあるし、レイ・チャールズ楽団の重鎮的なイメージが先入観としてあるからだと思うが、たぶん一番ベースにあるのはこういうハードバップというよりビバップテナー的な演奏だと思う。もちろんクレイは、テキサスがどうのこうのというのが無意味なほど、趣味のいい、訥々とバップフレーズをつむぐひとである。そのふたりの顔合わせなのだから、ひたすらバップフレーズの応酬、しかも、エキサイティングというより歌心……的な感じになることは必定である。録音当時、クレイ24才、ニューマン30才と、まだまだ若い。しかし、演奏は渋い。渋すぎる。そこがよろしいんでおます。演奏は、とくにリハを重ねましたという感じもなく、テーマなどは荒いがそういう点も魅力的である。両者の比較としてはクレイのほうが音が安定していて太く、ニューマンのほうが細くて甲高い。とはいうものの、いやー、ようするにふたりとも一緒ですよ、これは。デクスター・ゴードンとワーデル・グレイがまったく同じカテゴリーに属するテナーマンである、というのとほぼ同じぐらい彼らは同じである。フレーズが一緒なのです。こういうタイプのアルバムって、スタンダードとバラード以外はその場ででっちあげたようなリフブルースを何曲かやるのが通例だと思うが、なぜかブルース2曲は自作ではなく、どちらもバブス・ゴンザレスの曲。このふたりとバブス・ゴンザレスの接点がよくわからんなあ。それぞれの個性のちがいを楽しむには1曲目の「ワイド・オープン・スペーシーズ」というブルースが適当だが、私の好みは2曲目の「ゼイ・キャント・テイク・ザット・アウェイ・フロム・ミー」(この曲、好きなんです)と、クレイのフルート(なかなかよい)も聴ける「ファッツ・ニュー」です。なお、対等のリーダー作だと思うが便宜上先に名前のでているクレイの項に入れた。