「COMING HOME」(BLACK & BLUE/SOLID CDSOL 46025)
GENE ”MIGHTY FLEA” CONNERS
ライオネル・ハンプトン楽団出身で(いかにもそれっぽい!)長らくジョニー・オーティス・ショウに在団した(いかにもそれっぽい!)ひとだそうだ。ベイシーにも一時いたらしいが、ライナーノートはウィキペディアそのままみたいな感じなのでよくわからない。調べてみたがやっぱりようわからんのだった。ハンプトンの「ディン・ドン・ベイビー」でテナーと一緒に前に出てトロンボーンを上下させながら吹いているひとがいるがこのひとかなあ……とか思ったり(それも結局わからんのだ。ハンプトンの白黒のビデオなど見ているとあまりに凄まじい管楽器奏者のオンパレードなのでほとんどめまいがする)。とにかく1曲目からトロンボーンが出てくるまえに歌を歌う。オルガンのゴージャスなハーモニーに乗ってテナー(ロックジョウ)がブロウする。最高なのだが、え? トロンボーンは? そしてついにトロンボーン登場となるが、これがまた、シンプルに吹けとは言ったがここまで単純に吹けとだれが言った! と皆が突っ込むような、凄まじいまでのシンプルさで、アドリブなのかリフなのかわからないぐらいのすばらしい演奏。こういうとき、リフって強いなー。ベニー・グリーンよりもずーっとシンプルなのだが、トロンボーンという楽器にはこういうプレイがぴったりなのかもしれない。みんながJJジョンソンみたいに吹く必要はないっすよね。ボーカルとトロンボーン半々ぐらいなのだが、どちらもめっちゃいい感じなので、分ける必要はない。もちろんワイルド・ビル・デイビスのオルガン、ビリー・バトラーのギター、オリバー・ジャクソン(!)のドラムも最高で、ちょうどいい感じのソウルジャズになっている。正直言って、ひとむかしまえのオルガン奏者というかオルガン奏者のパイオニア的存在であるワイルド・ビル・デイヴィスがそんなことを微塵も感じさせない新鮮かつ斬新なプレイで驚く。この「思い切りのよさ」はオルガンジャズそのものなのだ。そして、ロックジョウ! 変態的ブロウの数々も、自身のリーダー作だとややキツい、と思われる向きも、こんな感じのサイドで吹かれると、わーいわーいと大喜びなのではないでしょうか。私も、とにかく本作におけるロックジョウの貢献度は大だと思っております。前衛……という言葉すら出てくるほどのワンアンドオンリーな演奏は「ソロの最後の音さえコードトーンであれば、あとはなにやってもいいもんね」的な実践に裏打ちされた確信のたまものであり、ジャズにおいて最重要な個性のかたまりである。もちろん、主人公であるコナーズの真っ黒い、ドス黒い、漆黒のトロンボーンは、マジで「ひと吹きでスピーカーのまえを漆黒にする」ほどのドスのきいたブラックミュージックで、いやー、たいしたことは一切やっていないにもかかわらず、魔法のように作用する最強の演奏だ。凄過ぎる。自身のボーカルもかなりよくて(ボーカルフィーチュアの曲の数がそれを物語っている)、たとえば「レット・ザ・グッド・タイムス・ロール」といった選曲も、とにかく「わしはエンターテインメントや!」という高らかな宣言のように思われる。この曲のオブリガードをロックジョウが吹いているというのもルイ・ジョーダン好きとしては感動だなあ(そして、この曲のトロンボーンソロは狂喜乱舞のシンプルさ!)。8曲目からはメンバーが変わり、ロックジョウにかわってアーネット・コブ(!)が、ワイルド・ビルにかわってミルト・バックナーが、オリバー・ジョンソンにかわってパナマ・フランシスが参加した豪華セッション。というか、ブラック・アンド・ブルー的なメンバー。個人的にはコブが入っているということでテンション上がりまくりなのだが、たぶん一般的には「え? メンバー変わってるの?」というぐらいの感じだと思う。濃厚なブラックエンターテインメントの空気はそのまんま持続している。9曲目はそこにエディ・チャンブリーが参加して、ますます濃厚に。コブが最初にめちゃくちゃいいソロをする。コブフレーズ連発! そして、コナーズのソロを挟んでチャンブリーもソロをするがこれもなかなかのすばらしいソロ(一箇所リードミスがあるのだが、そんなことはどうでもいい)。10曲目、11曲目はまたもとのメンバーで、最後の12曲目だけがまたコブやチャンブリー(12曲目のソロ、すばらしいです)ミルト・バックナー、パナマ・フランシスらの加わったセッションになっている。なんでそんなややこしいことをしたのか、という意見もあるだろうが、ずーっと聴いていると、アルバム全体の統一感はなきにしもあらず(このあたりのビミョーな感じをわかってください)なので、気にならない。とにかく全体を通して、主役であるコナーズのトロンボーンとボーカルが貫いているのでレコードに8曲目以降を追加した本CDは最高の内容となったと思う。傑作!