norman connors

「BEYOND A DREAM」(ARISTA/SONY MUSIC LABELS SICJ 157)
PHAROAH SANDERS & NORMAN CONNORS

 ファラオが入ってたらとにかく何でも買う私だが、本作は持っていなかった。それで今回の廉価盤発売を機に生まれてはじめて買ったのだ。もちろん内容は知っていて、テープを持ってた。昔はこのアルバム、輸入盤屋でカットアウトで山のように売ってたのだ。スカみたいな「ファロア」や、大嫌いな「ラヴ・ウィル・ファインド・アウェイ」や、日本制作のバラード集などすら一応は購入している私がこのアルバムをなぜ買わなかったかというと、「あまりにファラオの出てこない曲がアホすぎる」ということにつきる。ファラオはいい。だいたい山師だし、そういうファラオがわしゃ好きなのだから。スピリチュアルジャズだとか新興宗教の教祖みたいなことを言われておるが、世界中のいろいろな宗教や宗教っぽいものからネタを持ってきて組み合わせ、わけのわからん一大絵巻に仕立て上げるのはまさに洗脳というかサギみたいなもんである。しかし、それはそれでよい。ノーマン・コナーズともなるとさすがに能天気すぎてちょっとついていけん。実質的にはダンス・オブ・マジックと同じ音楽だと思う(メンバーが小粒になってるだけ?)。5曲中、ファラオが入ってるのは2曲だけ。1曲目の冒頭から登場するソプラノは、一聴して「へったくそやなー」と思うタイプのやつで、てっきりファラオだと思ったら(ファラオもソプラノの下手さは定評がある)バジー・ジョーンズというひとだった。音がチャルメラみたいで、ファラオのソプラノと似ているのだ。しかし、高音部がことごとくちゃんと吹けてない(低音部が鳴っている)というダメダメな感じ。音楽的にはファラオと共通していて、ポップで呪術的でリズム主体のモードジャズ、でしょうか。ただし、ファラオのようなドロドロ感はなく、明るく楽しい。2曲目は速いサンバで、ここでもソプラノのひとが爆走するが、これも1曲目と同じぐらいあかんソロ。トランペットも、とくになにもしていない。途中から出てくるアフリカ+バップ的スキャットがこのアルバム全体の白眉なのか? そのまま終わっていきます。3曲目はいよいよファラオ登場で、一気にいかがわしさがアップする。この曲でのファラオはとにかくめちゃくちゃかっこよくて白熱します。ひたすらトリルしながらそれを喉を使って持ち上げていき、クラスターみたいにするやりかたで一曲(といっても4分)を通すという姿勢には敬礼! こういうところから私は多くを学んだのだ。アルバム全部こんな感じだったら超傑作だったのになあ(ファラオファン的には)。フェイドアウトするが、このあとも続いていたのかどうかはわからん。そんなに好きなら、この曲だけのためにレコードを買えばよかったじゃないかと言われそうだが、4分だけやからなあ。4曲目はボビー・ライルのソロピアノで、これが5曲目の「カジノ・ラティーノ」という曲のイントロとなる。リズムが入り、「ユーヴ・ガット・トゥ・ハヴ・ア・フリーダム」とほぼ同じ(2小節目がちがう。あの、Aのフラジオ連打のイントロ的パートもない)曲がはじまる。ファラオはもちろん快調だが、バックがラテン調を終始崩さないところがかなり違っていて、そのお気楽能天気感からか、ライヴなのにそれほど咆哮することなくおとなしく終わる感じ。そのあとピアノとベースのやりとりになり、アレックス・ブレイクのエレベのソロになる(後年、ニッティング・ファクトリーで「ナウ・イズ・ザ・タイム」というファラオ・サンダースをフィーチュアした自分のグループのアルバムを出すひと)。最後はコンガのソロになってでたらめスキャットのやりとりになり、アホっぽいなかなぜかフェイドアウトで終わっていく。テーマはどうなったんじゃ! コナーズは、こういうええかげんなところが好きなひとは好きなのだろうが、個人的印象としては、もっとファラオにひたすら吹かせてやればよかったのになあという感じの演奏(ファラオファン的には)。まあ、このラテンな雰囲気では「自由を!」と叫び、テナーを咆哮させる……という展開にはならんわなあ。ノーマン・コナーズはこのあとプロデューサーとしても成功するが、まあ、それもわかる気がします。なお、表記上はファラオ・サンダースの名前が先に出ているが明らかにノーマン・コナーズのアルバムなので、コナーズの項に入れた。