「SALT TASK」(RELATIVE PITCH RECORDS RPR1044)
CORSANO COURVOISIER WOOLEY
ネイト・ウーリーとかピーター・エヴァンスとかいったトランペットで即興をやるひとは、すごいのはわかっているのだが、なにしろ当方テナーサックスが好きなうえに、時間もお金も限られているので、どうしてもそういうひとの作品はパス……ということになる。しかし、本作はさすがに買いましたよ。そして、去年(2016年)作品にもかかわらず(録音は2015年)ずーっと聴き続けている。とにかく麻薬的というか、冒頭から最後までめちゃくちゃ面白くて、通して聴くとまたリピート再生したくてたまらなくなる。アコースティックなインプロヴィゼイションのさまざまな要素がぶち込まれていて、終始わくわくさせてくれる。傑作であることはまちがいないのだが、ひとつだけ、誤解を覚悟で書いておこう。というか、いやー、間違いなく誤解されるだろうな。こんなことを前もって言うと、稲田大臣の得意とする「誤解を招いたことをお詫び……」みたいになるが、正直なところを吐露すると、私は管楽器にはそれぞれ特性があるが、サックスはこういったフリーインプロヴィゼイションとかノイズ、フリージャズに向いていると思っている。菊地さんも「サックス・ワールド」でそういう主旨のことを書いていた。それはアコースティックな状態においてノイズを楽々と出せるというサックスの特徴に起因するわけで、オーネット、ドルフィー、ファラオ、アイラー……といったフリージャズ初期にサックスがトランペット奏者よりも幅を利かせた原因だと思うのだが、ここで聴くウーリーのトランペットは、トランペットという金管楽器の長所・武器・特色はそのままに、従来はサックスの専売であったようなタイプのノイズも完全に自家薬篭中のものとして、軽々とインプロヴィゼイションを行っているように聞こえる。こうなったらもう向かうところ敵なしというか怖いもんなしというか、凄すぎるとしか言いようはないですよ。サックス好きが上から目線でなにを言うとんねんと思われるのが嫌だが、とにかくこれはトランペットによる即興のひとつの到達点だとすら思います。それにしても、ウーリーが駆使しているテクニックの数々には驚かされる。まったく無理がないし、自然にそれを扱えているところも驚愕である。そして、シルヴィエ・クールヴォアジェ(と読むのか?)とピアノも本当にすばらしい。反応がいちいちかっこいいし、自分主導でどんどん仕掛けるし、それらが全部具体的なアイデアに基づいているので力強い。このひとはめちゃいいと思う。そしてコルサノがすばらしいことはよーーーーくわかっております。という3人の即興。買ってから超ヘビーローテーションで聴き続けているが、なかなかそういうハマったアルバムって逆に言葉が見つからないというか書けないので、いまごろにこうやってだらだら感想を書いている次第です。傑作! だれのリーダー作というわけでもないようなので最初に名前の出ているコルサノの項に入れた。