sonny cox

「SOUL SOUNDS」(MCA RECORDS MVCJ−19024)
THE 3 SOULS FEATURING SONNY COX

 こういうアルバムの日本盤が出たということはやはりコテコテデラックスの功績なのだと思う。1965年の録音だが、チャールズ・ウィリアムズなどとの共通点を感じる。ゴスペルシンガーのようにアルトでシャウトする感じだろうか。メロウかつファンクな魂は延々と継承されてている。古くはジョニー・ホッジスに端を発し、アール・ボスティック、ルイ・ジョーダンらを経てソニー・クリスがそれを受け継ぎ、メイシオ・パーカー、ハンク・クロフォード、グローバー・ワシントン・ジュニア、デヴィッド・サンボーン……などなどファンクなアルトの系譜は綿々と続いているのだ。ここで聴かれる青筋を立てた直情的な表現は我々の心臓を「どきゅん!」と撃ち抜くし、ちょっと力を抜いたメロウな表現はハンク・クロフォードやグローバー・ワシントンに通じる「洒脱でソウルフル」な感じそのままだ。スリー・ソウルズというのはソニー・コックスのアルト、ケン・プリンスのオルガン、ロバート・シャイのドラムといういわゆるオルガントリオの3人組だが、本作ではそこにエレベ(めちゃ有名なひとだそうです)とギターがほぼ全編に加わっている。しかし、このグループがアルトのソニー・コックスの魅力が中心に成立していることは間違いない(フィーチュアリング・ソニー・コックスと書いてあるもんね)。このひとのアルトはとにかく泣き節で、朗々とした音色でソウルシンガーのようにシャウトする。芯のある音もファンキーかつメロウでいいっすね(たぶんブリルハートのエボリン)。バンドサウンド自体はさすがに古い感じに聴こえるかもしれないが、今となってはそのレトロさもかえって魅力である。ジュークボックスから聞こえてくるような良さがある。曲調もいなたいジャズロック調あり、R&B調あり、ソウルっぽいやつあり、ジャズ的なやつあり、で楽しい。1曲目がはじまったときはさすがに「おいおい、演歌かよ」と思ったが、すぐにその熱気に巻き込まれてなんとも思わなくなった。そういうもんなのだ。初期のロックンロールのファンも、たぶんそんな感じだろう。ええもんはええ。5曲目の「ビッグ・ジム」というアップテンポのブルースは本作では一番ジャズっぽい4ビートだが、ビバップをほとんど感じられないフレーズをぶりぶり吹きまくるコックスのアルトはやはりただものではない感がある。オルガンソロもいい。6曲目は4曲目に続いてバート・バカラックの曲だが、これを切々と歌い上げるコックスのアルトはメロディというもの、アコースティックな音色というものの力を再認識させてくれる。つまり……とにかく聴いてて気持ちええんや! ということです。ジャズファン的にはコックスがころころコブシを回すバップ的(といってもシャウトしまくる)「ディア・オールド・ストックホルム」が人気かも知れない(推測)が、じつはこの曲が本作の白眉かもしれない。7曲目はショーターの「ブラック・ナイル」と書いてあるが、もちろんまったく関係ない曲。ショーターがこんな8ビートのムード歌謡みたいな曲書くか! でもダサかっちょええです。オルガンソロも聴きもの。8曲目はケニー・バレルの名盤「ミッドナイト・ブルー」で演奏されている曲だが、原田さんの解説で「あくまでバップ流儀の中で、たたみかけるようにソロを吹ききる」というのはよくわからん。バップ的なものをこのソロにはほとんど感じないのであります。ラスト9曲目はまたしてもショーターの「アルマゲドン」ということだが、こちらは間違いなく「アルマゲドン」である。「ブラック・ナイル」は同じ「ナイト・ドリーマー」に入っているので、英文解説者が勘違いしたのだろう。コックスのソロはバップ的でもあるが、やはり自分の個性を押し出したもので、それは曲調とあっているかはともかくとしてこの曲を取り上げたのはきっとショーターが好きなのだろうなあとは思った。コックスの単独リーダー作である「ザ・ウェイラー」がどこにいったのか見当たらないのでレビューできないのだが、こういうめちゃすごいひとがガンガンリーダー作を出せない、というあたりがアメリカの(当時の)音楽シーンの怖いところだなあと思った。傑作! なお、便宜上コックスの項に入れた。