「IF DUBOIS ONLY KNEW」(VOICEPRINT VP194CD)
ELTON DEAN・PAUL DUNMALL
95年の演奏(ポール・ウエストウォーターの自宅におけるライヴということらしい)。ディーンは早逝だったが、本作は亡くなる11年前だし、ダンモールはまだ40代という、ふたりとも心身ともに充実しきっていただろう時期のデュオ。聴くのが楽しみでしかたなかったが、期待は裏切られることはなかった。エルトン・ディーンはアルトとサクセロ、ダンモールはテナーとCメロとソプラノを吹いている。全編即興だが、荒い演奏はひとつもなく、細かい部分まで注意の払われたプレイばかりで、しかも超絶技巧の数々が各所にさりげなく織り込まれていて、聴いていると「むひーっ」と身体をよじって感動せざるをえない。どちらかというと「寄り添う」感じのデュオだが、相手の音を聴いて瞬間的にそれに対してオーケストレイションしていく、という作業が延々と行われている。その反応の速さは驚異的だ。オーバーダビングなどのない、2本の管楽器だけのやりとりだけでその場に突然巻き起こる倍音のビンビンした屹立がめちゃくちゃかっこいい。しかも、ふたりともアルトとテナーの本来持っている「音質」というかソノリティを崩していない。パッと聴いたら非常に乾いた、クールな印象を受けるかもしれないが、じつは奥に秘めた燃え上がるようなパッションのあるデュオ。最高です。傑作。なお、対等のデュオだと思うが先に名前の出ているエルトン・ディーンの項に入れた。