「THERE IS」(CHESS/MCA RECORDS CHD−9288)
THE DELLS
こういうドゥーワップ(ではないのか?)というかボーカルグループはもっともよく知らない分野である(ゴスペルも)。デルズは学生時代にブルースとかR&Bとかをいろいろ探り探り聞き出したころに、いわゆる入門書に載っていたので買った(LP盤を)。正直、まるでわかりませんでした。私はブルースは全然問題なく聴けたのだが、サルサとかリンガラとかレゲエとかドゥーワップとかR&Bとかソウルとかはさっぱりだった。みんながよく聴いていたダニー・ハサウェイとかオーティス・レディングとかもよくわからなかった。「わかる」必要があるのか、聴いて、ただ感じればいいのだ、みたいなことではなく、当時の私には「わかる」ことが重要だったのだろう。そして、私にはわからなかったのである。とにかく時間がかかった。あれから何十年。今聴くとこの音楽はすんなり胸に入ってくる。フラミンゴスとかムーングロウズとかも同じ本で紹介されていたので購入したのだが、やはり今聴くと「すげー」と思う。でも、なぜそれらの音楽を私があまり好まなかったのかというと、たぶん……だが、このポップさ、娯楽性が20歳そこそこの私にはエンタテインメント過ぎたのではないかと思う(でも、ルイ・ジョーダンとかめちゃくちゃ好きだったしなあ……)。このアルバムはヴィージェイでヒットを飛ばしたデルズが、チェスに舞い戻り、アルバム単位での大ヒットになった最初のものではないかと思う(よく知らんので間違ってるかもしれない)。ファンキーなリズムとシャウトするリードボーカル、それを盛り立てるコーラス……というこれでもかこれでもかと聴き手を楽しませようとするこの姿勢はすばらしいと思う。アレンジもどの曲も工夫が凝らされていて、耳をそばだててしまう(バリトンサックスのアレンジはいかがなものかと思わぬでもないが)。たとえば10曲目のバラードでバリトンリードのすばらしさとコーラスの美しさは私でもよくわかります。ファンキーでソウルフルで小気味よいこの音楽は、たまに聴くと心が癒されるかも……と思います。