「THAT’S ME」(ENJA RECORDS CDSOL−6577)
BARBARA DENNERLEIN
女性オルガン奏者バーバラ・ディナーリンだが、メンバーが凄すぎる。ドラムがデニス・チェンバース、テナーがボブ・バーグ、トロンボーンがレイ・アンダーソン、ギターがミッチ・ワトキンス! どう考えてもリーダーが一番知名度低いやろ。しかも、ほかのメンバーが全員、ただものではない。一癖もふた癖もある猛者ばかりである。それらをこのひとがどういう風に言うことをきかせるのか……。とにかくディナーリンはめちゃ上手い。リズムもバッキングもすばらしいし、ソロもそつがない。しかし、上手さという点ではかなりほかのオルガン奏者から図抜けていると思うが、ほかのオルガン奏者……ジミー・スミスを筆頭に、ワイルド・ビル・デイビス、ミルト・バックナーなどの古強者やのちのジャック・マクダフ、ジミー・マグリフ、ロニー・スミス……といった連中のようなアクの強さ、ど迫力、グワーッ!と盛り上げるその気迫……みたいなものがやや足りぬか。ブルースもちゃんとファンキーに弾いているのだが、その「ちゃんと」が邪魔をしてこちらにドドドドーッと突進してこないのである。では、本作はいまいちかというと、とんでもないことで、ジャズオルガン史上の大傑作といえるのではないかとすら思う。なにしろ、ボブ・バーグとレイ・アンダーソンが本気で吹きまくり、吠えまくりなのである。ここまで気合いの入ったブロウはなかなかない。もちろん両者とも上手いだけではすまされぬ、トンガリまくりのソロを展開するバケモノだ。そして、ギターのミッチ・ワトキンスもやりたい放題である(かなり変なフレーズを弾きたおしておりますなー)。そして、ドラムのデニス・チェンバースが全体をここぞとばかりに煽りまくり、どつきまくる。4ビートジャズのアルバムでは滋味に渋く叩くこともできるデニス・チェンバースだが、ここでは本領発揮のバカテク+ド迫力+重いグルーヴを前面に押し出したプレイである(ソロもすごい)。しかし、フロントの化け物ふたりがこれだけの好き勝手のブロウを展開できているというのも、ディナーリンのベースラインとバッキングがデニス・チェンバースのリズムとばっちり合って、そのふたりの作り出す重戦車のような鉄壁のグルーヴが後ろから支え、あおりしているからなのだ。つまり……ディナーリンはえらい! という結論になる。もうひとつ言うと、曲がいい。これはディナーリンのコンポーザーとしての才能を示している(1曲をのぞいて全部ディナーリンの曲なのだ)。4人の怪物たちを、めちゃくちゃやらせるように見せかけて、じつはしっかりと手綱を握り、自分の音楽を作り上げているバーバラ・ディナーリンはすげー! 傑作。少なくとも、ボブ・バーグのファンは聞かないとダメっ!