nat dixon

「BACK STREET BLUES」(SAX−RACK SR 7777)
THE NAT DIXON QUARTET

 このひとは謎で、もう一枚「CONTOURS」というアルバムを持っているはずなのだが、どこに行ったのかわからん。本作もいつ買ったのかわからないが、相当昔のはずである。なんの予備知識もなく買ったのだろうなー。経歴を調べてみると、ブロンクスの出身であり、ナット・ディクソン師という肩書で、教会の聖職者をずっと務めているひとらしい。そういう聖職者の服を着て教会でテナーを吹いている画像も見つかった。しかし、たとえばベン・ブランチのようにそういう音楽性を押し出してゴスペルシンガーが歌うようにサックスでシャウトする……といったタイプではない。ここで聴かれるように、ビバップを基調としたストレートアヘッドなジャズで、しかもラテンっぽい曲をいくつも取り上げている。それに、なんとジャック・マクダフとジミー・ポンダーがサイドにいる、ということで、てっきりコテコテのブルースっぽい演奏をするひとかと思っていたら全然そっち方面ではないのだ。このメンバーからして、マクダフバンドのメンバーがボスをサイドに据えてのリーダー作かと思ったがそうでもないらしい。テナーの吹き方も軽く、素直で、ときどきグロウルというかフラッタータンギングをまじえる程度。音楽関係の教育者としての活動も熱心なようで、なんというか真摯なひとなのだろうと思った。ほんまはめちゃくちゃ上手いのだが、テクニックで聴かせるタイプではなく、演奏はどれも朴訥といっていいぐらい大向こう受けを狙わないもので、味わい深く好感が持てるが、性格がソロに直結しているのだと思われる。こういうひとっていますよね。きっとこのひとによってミュージシャンになった若者が多数いるのだろうと思う。と同時にこのひとの説教で救われたひとも少なからずいるだろう。