dj sniff

「DJ SNIFF INCREDULOUS CUTS−REINTERPRETATIONS OF THE DOUBT MUSIC CATALOGUE」(DOUBTMUSIC DMS−152)
DJ SNIFF

「DJ SNIFF INCREDULOUS CUTS−REINTERPRETATIONS OF THE DOUBT MUSIC CATALOGUE」(DOUBTMUSIC DMV−1)
DJ SNIFF

 これから書くことは無知ゆえの頓珍漢な文章かもしれないが、それはそれで仕方ない。
 こういうリミックスものというと、まったく元の音源を知らず、白紙で聴くならばいいが、元ネタに思い入れがあると、どうしても先入観が生じるし、元ネタを超えるほどの面白さになる場合も少なく、あまり「いいな」と思ったことはないが、このアルバムは別。想像していたよりもはるかに面白かった。オリジナルを知っていても(全部、聴いたことのあると音源ばかりだった)、多くのトラックでまったく新しいものにそれが変化しており、元を知っているひとも知らないひとも同時に面白がれるぐらいのハイレベルに仕上がっていた。結局はやるひとのセンス、音楽性の問題なのだ。リミックスというが、実際には新たに作曲し、オーケストレーションしているに等しいことを行っており、これはとんでもなく創造的な行為だと思う。1から作るよりもハードルが上がるし、スゴクいいものができても、元が良かったからねえ、とか言われるんじゃ割に合わないかもしれないとか、余計なことを思ったりした。あと、思ったのは、こういうひとはコンポーザーであり、即興演奏家であり、指揮者であるというだけでなく、いちばんの役割はドラマーだということだ。ターンテーブルを使おうが、ライヴエレクトロニクスを使おうが、どこかで強烈なリズムへの意識があるように思える。それはDJの音楽が踊るためのものだから、というようなこととはまたちがって、もっと、たとえばトニー・ウィリアムスやエルヴィン・ジョーンズやバディ・リッチ(たとえが古くてすいません)といった凄いドラマーのように、リズムで世界をクリエイトしている……というぐらいの「ドラマー」ということです。本作ですごく気に入って繰り返し聴いているのは、マッツ・グスタフソンのバリトンサックスの強い「ぶきっ」というアタックと時折マッツが発するヴォイスをうまくとらえて、それでドラムソロを構築してしまったような2曲目、巻上さんのヴォイスをエレクトロニクスによる演奏のように加工してしまった4曲目、同じく巻上さんの声で凄まじいパーカッションソロを行っているような5曲目、梅津さんのサックスを吹き出す瞬間のエアの音をとらえて、それを中心に、いろいろなファクターを組み合わせて、別世界にいざなってくれる6曲目、大友さんのノイズギターと山本、千住のドラムデュオの音源を重ねためちゃめちゃかっこいい9曲目、本人のライヴによる11曲目など。
 レコードのほうも触れておくと、こちらは収録曲そのものがCDとは違っていて、CDに入っている曲も微妙に演奏時間が異なる。そして、DJ用のループもいっぱい入っており、実用的。でも、このループをざーっと並べている部分を聴くと、またちがったひとつの楽曲のようでおもしろいのだった。レコードにしか入っていない曲で気に入ったのは、冒頭のイントロ的な「ダウト・イントロ」(ブラックシープの音源を使ったものだが、なーんかすごくいい)、B2に入っている東京でのライヴ音源など。やっぱりレコードはいいなあ。家にターンテーブルがないひとはしかたないけど、持ってるなら、ぜひCDとLP両方買うことをおすすめします。レコード番号がDMV−1ということで、VはヴァイナルのVだろうが、その第一号がこのアルバムというのはなかなか感動的だよなー。