「長崎・生月島のオラショ」(KING RECORD KICC5715)
世界宗教音楽ライブラリー15
「ベルゼブブ」という小説を書いたとき、長崎の隠れキリシタンのことをいろいろ調べて、作中にも使ったが、オラショに関しては音源が入手できず、資料本からいろいろ想像して書いた。今回、はじめて生月のオラショを聞くことができ、感無量である。感無量であるが……3人の男が同時に読むので、何を言ってるのか全然聞き取れない。それがまた一種の味わいなのだが、ひとりで唱えてくれればなあ……。でも、実際にはこうやって複数人が同時に唱えていたのだろうから、このほうが現実の行事には近いのだろう。「なんとかかんとかウラウラノーベス」とかいうのも「ベルゼブブ」にはいっぱい使わせてもらったが、こんな風に唱えていたのか。もっと、なんというかおどろおどろしいものだと勝手に思っていたが、あっさり、淡々としたものでした。そりゃそうだろうな。主祷文(天にまします……というやつ)や聖母マリアの祈り(めでたしせいちょう……というやつ)は私が知っているものとほとんど変わらない。これも驚いた。もっと長年の地下生活(?)において元がわからないほど変容していると思っていたが、意外と原型を維持したままだったのだなあ。とにかく、いろんな意味で非常に感銘を覚えたアルバム(?)であった。ただ、宗教音楽全集の一枚なのだが、はっきりいって音楽的要素はほとんどありません。