lou donaldson

「FRIED BUZZARD」(MCA RECORDS MVCJ−19021)
LOU DONALDSON

 カデットに吹き込まれたアルバム。とにかくビリー・ガードナーのオルガンベースはめちゃくちゃかっこいい。ルー・ドナルドソンは本作ではもうひとりのフロント、ビル・ハードマン(裏ジャケットに「世界的に偉大なトランぺッターのひとり」と書かれているが、たしかにすばらしい)とともに端正にバップフレーズを歌いまくっている。でも、パーカーのように才能を凝縮してぶちかますわけでも、ルイ・ジョーダンやアール・ボスティックなどのようにファンキーアルトに徹するわけでもなく、中庸にブルースっぽい曲を奏でて、どうだ、このファンキーさ……と言われても印象としては「真面目なバップアルト」という感じである。リズムセクションはドラムがレオ・モリスでギターがウォーレン・ステファンズで悪いわけがない。1曲目など、テーマからソロ回し、エンディングまであまりにきっちりしているのでかえって驚くほどだ。時代の要請か、次第にバッパーからファンキーアルトに変化していき、最後はまたバップに戻って亡くなった……というひとだ。すごく不器用なアルト吹きだったのだと思う。2曲目の「サマータイム」はドナルドソンのロングトーンを聴かせるテーマもすごく大袈裟。ガードナーのオルガンソロはめちゃくちゃいい。3曲目はミディアムのブルースで、すぐに終わる。4曲目ものりのりのブルース。ここでのガードナーとレオ・モリスのコラボレーションは本当にすごい。つづくギターソロもほとんど2音だけで延々つむいでいく表現力はすばらしい。でも、そのあとのドナルドソンのアルトソロはリフを重ねてバップフレーズでつなぐような感じ。ファンキーなノリはしっかり保っていて客は大喜びしている。5曲目はアップテンポの歌もので、ドナルドソンのバップ魂が炸裂する。トランペットやオルガンに比べてもドナルドソンのアルトが一番爆発している感はある。4バースがあってレオ・モリスが技を見せつけ、ドナルドソンのアルトが逆循の部分をひたすら吹きまくって(ここが本作の白眉といってもいいかもしれないぐらいの演奏)エンディング。ラストは超アップテンポでドナルドソンが吹きまくり(ここもすごいです!)、ブレイクでも超絶技巧をみせる。ハードマンも同様で、凄腕のガンマンといった印象。やっぱりファンキー、R&B、ソウル……を装うドナルドソンより、バップ魂を見せつけるドナルドソンのほうがいきいきしているように感じられる。

「EVERYTHING I PLAY IS FUNKY」(BLUE NOTE CDP 7243 8 31248 2 4)
LOU DONALDSON

  6曲入っていて、そのうち4曲は相棒のトランペットがブルー・ミッチェル、オルガンがロニー・スミスギターがメルヴィン・スパーク(全体に大活躍!)、エレベがジミー・ルイス、ドラムがアイドリス・ムハマッドと当時のジャズロック勢の強面勢ぞろいな面子で申し分ない。あとの2曲はトランペットがエディ・ウィリアムス、オルガンがチャールズ・アーランド、に代わるが、こっちももちろん強面揃い。タイトルはアラン・トゥーサンが書いた「EVERYTHING I DO GONNA BE FUNKY(FROM NOW ON)」をちょっと変えたもので、1曲目に演奏されている曲のクレジットは「EVERYTHING I DO GONNA BE FUNKY(FROM NOW ON)」になっている。リー・ドーシーのレコードでは「GONNA」が「GOHN」もしくは「GONH」とつづられているものもあってどれが正解かよくわからん。ルー・ドナルドソンが取り上げたのはオリジナルが出てすぐあとで「機を見るに敏」な感じ。メンバーによる歌も入っていて、アルバムのオープニング曲としてはバッチリ。ルーの「ファンクさ」はドスの効いたヘヴィなものではなく、どちらかというと丸っこい、人懐っこい雰囲気。2曲目も適度でおおらかなノリのブルース(ほとんどベースラインだけの曲)で、スパークスのギターソロが炸裂し、ミッチェルとドナルドソンも決して急がないゆったりとしたバップを演奏していて心地よい。3曲目は一転して大スタンダードのバラードを4ビートで。ルーはテーマを朗々と奏でているだけだが、それでもすばらしい表現になっているし、ロニー・スミスの夢を見ているかのように歌っているオルガンもすごい。4曲目はエディ・ウィリアムス、チャールズ・アーランド参加の演奏で、はねる感じのリズムのジャズロック(ブルース)だが、ルーのソロもエディ・ウィリアムス、メルヴィン・スパークスのソロもめちゃくちゃねちっこい後ノリで気持ちいいったらおまへん。つづく5曲目も同メンバー。タイトルの「西インドダディ」というのはたぶん西インド諸島のことで、リズムもミディアムのカリプソであるが、ルーもエディ・ウィリアムスもビバップ的なフレーズを吹いている。こうなると明るく楽しい、陰のないジャズという感じで、まあルー・ドナルドソンというのはそういうひとだと思う。ラストの6曲目はまた1〜3曲目のメンバーに戻って、普通のオルガンジャズというノリの曲(マイナーブルース)だが、ちょっとシャッフルっぽくも聞こえる(リズムがはねて、かっこいい)のはエレベのノリのせいだろうか。アルトソロが見事で、ほかのメンバーもそれに続く。個人的には、タイトルほどドヤ顔で見得を切るような演奏はなく、ジャズの範疇で楽しめるアルバムだと思いました。ラスティ・ブライアントなんかだともうちょっとヘヴィなノリになるんですが、これはこれで好きです。