michel doneda

「KOH−KAN LIVE AT 星誕音楽祭」(OHRAI RECORDS ORCD−003)
TETSU SAITOH/MICHEL DONEDA

 はじめてこのアルバムでドネダの演奏に接したのだが、最初聴いたときは、なんちゅうすごいデュオやっ、なんちゅうすごいソプラノやっ、と目から鱗が落ちる思いだった。それから愛聴盤として、たびたび聴いていたのだが、聞き込むにしたがって、なんというか、あまりのまとまりの良さが不自然に思えてきた。たしかにドネダは、ソプラノですごい音を出す。刺激的な、破壊力のある音。だが、そういうのもぜーんぶ含めて、予定調和的というか、きっちりした「作品」に感じられる。たとえば、エヴァン・パーカーは、きっちり構築した演奏をしていても、どこか危なっかしいというか、今にも破綻をきたしそうなところがリアリティを産んでいるように思うが、ドネダはあまりに完璧すぎ、コントロールしすぎで、そういう危うさはあまりない。でも、きちんとしているのが悪くて、破綻したほうがよい、ということは絶対ないわけで、たしかに傑作だと思うよ、このアルバム。安心して繰り返し繰り返し楽しめる。でも、その「安心」がくせものだったりして。たとえば、「フリー・インプロヴァイズド・ミュージックってどんなもの?」とたずねられたら、これを渡せばその適切な回答になっているのではないか、と思えるような一種の教科書である。なお、どちらが主というわけでない対等のデュオだが、一応ドネダの項に入れた。