「悪党(DIE BANDE)」(POOL JAZZ POOL76043)
ANDREAS DORMANN HIROYUKI EIZUKA SHIRO ONUMA
もう、びーーーーーーっくりくりくり栗まんじゅう。これはかなりショックでした。ふだんなら、全然知らないサックス奏者、しかもジャケットを見てもアルトかテナーかわからない、そんなミュージシャンのアルバム、しかもしかも二枚組を、不見転で買うことはないのだが、ユニオンで見て、大沼さんの名前にひかれて、なんとなーく買ってしまったのだ。金がありあまっていたわけではなく、とぼしい所持金のなかから、いろいろ考えに考えたすえ、このアルバムを購入したわけだが、聴いてみて驚いた。めちゃめちゃええやん! すごい……すごすぎる。サックスは吹いておらず、全編バスクラのみ。ピットインでのライヴだが、二枚組をバスクラ一本で吹いて吹いて吹き倒し、しかも、聴き手を飽きさせないというのはとんでもない実力だと思う。ドルフィー→ポルタル→スクラヴィス→……という路線からか、ヨーロッパではバスクラを主奏楽器としているすごい奏者がけっこう目につくが、ルディ・マハールらとともにこのひともそういうひとりだろうか。すげえなあ。東京のミュージシャンにとってはおなじみの名前のようだが、私はこのアルバムではじめて聴き、めちゃめちゃ気に入りました。もちろん、共演の二人もすばらしく、いやあ、これは傑作ですよ。躍動感、テンション、高揚感、ド迫力……なにをとってもただごとではない。適度に荒々しく、適度に繊細だが、そんなことを吹っ飛ばすような暴風のような説得力があって、ただひたすらスピーカーの前で、うんうん、とうなずくしかない。それぐらい価値のある演奏のように思えました。この日のピットインの客はめちゃめちゃラッキーだよな、とも思った。こんな凄い演奏を目の当たりにできたのだから。「悪党」というタイトルも意味深で、なるほどたしかに「隠し砦の三悪人」といった感じだわい、とも思ったりして。もし次回来日したらぜったい生で聞きたいものであります。