「YA! YA!」(HOODOO RECORDS 263573)
LEE DORSEY
フューリーのシングルがいろいろヒットしていたリー・ドーシーの最初のアルバム(にボーナストラックとして11曲足したもの)。リー・ドーシーを知らないひとでもタイトル曲や「ド・レ・ミ」あたりは一度ぐらいは聴いたことがあるのでは(ニューオリンズ系のコンピレーションとかにかならずといっていいほど入っているので)。このころのドーシーは、このノベルティで楽しい曲調を特徴のあるボーカル(ややしゃがれた感じ)でノリノリで歌いこなす感じで、1曲聴くとつぎもまたつぎも……となるような中毒性がある。しかも、バックはアルヴィン・レッド・タイラー、ハロルド・バチストという強力なサックス陣やアラン・トゥーサンなどの強面の連中が務めるのだから最高である。たとえのんびりしたテンポのあっけらかんとした曲に思えても、8ビートがゆるゆるに思えても、底にはニューオリンズR&B独特のあの凄まじい撥ねるビートがあるのでそのスピード感、スウィング感は半端ではない。聴いていると「至福」という言葉が浮かんでくる。このあとリー・ドーシーは時代とともにどんどんかっこよく(?)なっていくが、本質的には変わらないと思う。12曲目以降はボーナストラックで、これもめちゃくちゃいいのだが、オリジナルアルバムに入らなかったのは単に当時のドーシーに期待されていたものがノベルティな曲調だったせいだろうか。クオリティはものすごく高くて聞き惚れる。この時期のリー・ドーシーはとにかく楽しいし、ディープで、どこか懐かしい、ほかのだれにもできない音楽をやっていたと思う。