「LIVE IN COLOGNE」(WEST WIND 017)
DRESCH QUARTET FROM HUNGARY
これもよくわからぬまま店頭試聴してレコードを購入したものだが、めちゃめちゃ気に入って、折に触れて聞き返していたのだが、ミハイル・ドレッシュというリーダーの素性やこのアルバムを出したあとの活動などについてはまったく知らないままだった。気に入ったのなら追いかければいいのだが、インターネットとかなかった時代、英語が読めない人間にとって、海外のフリー系のミュージシャンの情報というものはなかなか入ってこなかったのである。今なら、ミハイル・ドレッシュがハンガリーを代表するサックス奏者で、ドレッシュカルテット名義のアルバムを多数出していて、リーダーとドラム以外はメンバーが入れ代わる……ようなこともすぐに調べられる。さて、本作だが、2サックスによって奏でられる高音部でのハーモニーを伴った吹き伸ばしは、だれでもバグパイプを連想するだろう。そういった民族音楽的な空気をはらみつつ、テナーの熱いモーダルなブロウ、アルトのいかにもフリージャズといった感じのソロが展開する。いやー、すばらしい。バリサクの使われかたも効果的で、めっちゃかっこいい。ずっと聴いていたいような快感の波が押し寄せる。ちょっとカルロ・アクティス・ダートのある種の演奏にも似たテイストがあるかもしれない。リーダーのなみなみならぬ音楽性と技量を感じました。なお、ハンガリージャズやミハイル・ドレッシュについてなんにも知らなかった私だが、ネットで調べると、岡島豊樹さんの詳細な紹介文があった。岡島さんの文章には本当にいつも教えられる。こういうひとを「研究家」というのだろうなあ。ロシアやヨーロッパの前衛ジャズにまったく無知だった私が、今、少しでもそういうものについて知識を持っているのはすべてこのひとの書いたもののおかげである。ジャズ評論家、音楽評論家数あるなかで、唯一、なにかを教えられた・教えてもらったのはこのひとからだけかもしれない。上から目線で、知識やうんちくをひけらかすひとはいっぱいいるけどね。