devin drobka

「BLUES TOWN」(SHIFTING PARADIGM RECORDS SP124)
DROBKA/WELLER DUO

 硬派なふたりがぶつかり合うデュオ。テナーとドラムのデュオというと、コレルトレーンとラシッド・アリの「インターステラー・スペース」をすぐに連想するが、最近のそういうデュオ演奏はさすがにそこからはかなり遠い。しかし、本作は逆に、というかなんというか、まさに「インターステラー・スペース」的なテナーとドラムのガチンコの激突を記録している。とはいえ、即興ばかりではなく、なかにはきちんと作曲され、それに基づいてインプロヴァイズされるものもある演奏は、スピリチュアルというより、しっかりしたビート、しっかりしたトーン、しっかりしたアイデアの積み重ねによるシンプルでパワフルなもので、聴くものの心をストレートに打つ。わかりにくい部分や精神性に頼る部分は皆目なく、ひたすらスコーン! と明快である。だからこそこの演奏に意味があるのだ。この太くて、率直で、ためらいのないテナーの音、そしてドラムの音……そのふたつしかないこの空間には、スピリチュアルなんたらかんたら……というものはなく、ただただふたりの人間が全力でインプロヴァイズする音で満たされているだけだ。一曲目冒頭の「ドゥン……!」という力一杯叩きつけられるフロアタムの音からはじまり、そこに硬質でフルトーンのテナーが朗々とからんでいく。その部分が本作のすべてを象徴しているかのようだ。正直、この押せ押せモードでアルバム一枚はしんどいかなあと思ったのだが、ふたりの信念というか確信というか、テナーのクリス・ウェラーの太くてでかくて、マルチフォニックスやサーキュラー、グロウルなどのギミックがない、原初的といってもいいような素朴(?)な吹き方(まるで50年代のロリンズが、いや、コールマン・ホーキンスがフリージャズをやっているような雰囲気)や、ドラムの「俺はフリージャズじゃなくてハードバップをやってるんだ」的な豪快かつオーソドックスな叩き方は、かなり説得力がある(9曲目のブラッシュも最高)。ふたりが全身全霊で押し寄せてくるような「怒涛」感はなかなか凄い。テナーを低音から高音まで「吹き鳴らす」快感がここにはある。いわゆるオルタネイティヴな奏法をほぼ使わないこのひとの潔さというか頑固さが心地よく思えてくる(9曲目はたぶん、サーキュラーを使っている)。表現の幅を狭めている、というより、まっしぐらにひとつのことを追求しているように感じる。7曲目とか、サブトーンで「ドレミファソラシド」と吹く場面があったりするが、それも変には思えない。豪快さと頑固さと稚気に満ちた演奏である。ダイナミクスも大きい9曲目がおそらく本作の白眉。おそらく生演奏だともっと説得力が増すだろうと思われる。腹にこたえる、聴きごたえのある傑作。