「1・2・3・4」(ARABESQUE RECORDINGS AJ0141)
RAY DRUMMOND
私はクレイグ・ハンディが大好きで、ビバップからモード、フリーまでを野太いトーンで吹き抜けるテナーがなかんずく好きなのだが、ここんとこちょっと内省的な演奏が多いなあ、とは思っていた。本作はかなりまえの録音であり、ベースのリーダー作ではあり、ドラムはビリー・ハートという鉄壁のメンツではあるが、もちろんクレイグ・ハンディの名前にひかれて購入したのである。一曲目、端正なソプラノが響いたときに、ヤバッと思ったのだが、その心配は杞憂だった。ソプラノでも、内省的というより、じつに瑞々しい表現をしてくれるのである。そして、テナーではぶちかましてくれるが、ほんと、このひとうまいよねー。私好みの、「テナーで吠えることのできる男」である。スタンダードも入っていて、その解釈も絶妙。もちろんベースのリーダー作なので、レイ・ドラモンドをフィーチュアした曲もあり(多くはない)、それもなかなかよい。全体に、緩急のある、バラエティ豊かなすばらしい演奏が並ぶなか、一曲、目が点になってしまった曲がある。「ゴーイン・ホーム」だが、ここでのクレイグ・ハンディは凄い。凄まじいといってもいい。なんでこんなことをしたのか? 頭が急にぶっとんだのか? とその正気を疑ってしまいたくなるほどの演奏である。この一曲だけでもみんなに聴いてほしい。そして、ぶっとんだときのクレイグ・ハンディの怖さをぜひ体験してほしい。いやー、これには参ったぜよ。