isabelle duhoit

「KOCHUU」(CREATIVE SOURCES RECORDINGS CS276CD
ISABELLE DUTHOIT/ALEXANDER FRANGENHEIM/ROGER TURNER

 ボーカルというかヴォイスとクラリネットのイザベル・デュトアを中心とした即興。ロジャー・ターナーのライヴの物販で買ったのだが、これもよかったなあ。低音域の、獣が呻いているような「唸り」というか「あえぎ」というか、悪魔じみたデュトアの声は強烈にインパクトがあり、セッションを引っ張るが、ベースとドラムも見事に応じて、ひとつのものを作り出していく。その狂気としか思えなかった「声」が、最初はデスボイスに思えていたのにだんだん神の声、天上の声に聞こえてくるという不思議(でも、喉を傷めないかと心配でもある)。そして、このひと、クラリネットを吹くと一転して美しいトーンでの演奏になったりするのだ(そこそこグロウルしたりフラッタータンギングを使ったりするときもあるが、ヴォイスのほうがずっとゲロゲロいっててインパクト強くて、クラはきれいな音での演奏が心に残る)。そのあたりの美意識も面白い。デュトアはリズムもいいし、ダイナミクスもすごいし、なによりさまざまな「音色の変化」が「言葉でない言葉」とともにつぎつぎと繰り出されるところがすごい。極上のサックス奏者やギター奏者やシンセ奏者に匹敵するような、千変万化する音色とフレーズの力は見事のひとことで、たとえばヒップホップのひともこういうのをどんどん聴くべきだよねー。たまたまだと思うが、日本の歌舞伎音楽を思わせるような部分もあり、またクラシックを思わせるような箇所もあった。いやー、3人とも超一流の即興演奏家だ。デュトアは2011年に来日していてコモンカフェでも演奏しているらしい。最近、ヴォイスパフォーマーのひとに興味が出てきて、いろいろ聴かせてもらってるのだが、この業界(?)も面白いっすね。やはりひとの声は凄い。ひとでない連中の声も凄いけどね。ライヴ、行けばよかった。傑作です。なおタイトルの「コチュー」というのは「壺中」ということだそうです。なお、録音やミックスなどはベースのアレクアンダー・フランゲンハイム(と読むのか?)が行っているが、一番先に名前の出ているヴォイスのイザベル・デュトアの項に入れた。